そして、この研究において最も健康に良い(死亡の相対リスクが低い)飲酒量は、男性では1日あたり0.5ドリンク(アルコール量にして6~7g)、女性では1日あたり0.3ドリンク(アルコール量にして4g)という結果となりました。この結果から、お酒を本当に「百薬の長」にするための適正量は、理想的には男性は0.5ドリンク、女性は0.3ドリンクという結論になります。2人暮らしであれば、ビールの350ml缶を2人で分けて飲むくらいが1番良いということですね。

この結果でもう一点、男性では1日2~3ドリンク程度まで、女性では1~2ドリンク程度までは、全く飲まない人よりも死亡リスクが低いという結果になっているのには、驚かれる方も多いのではないでしょうか。

日本の厚生労働省は、こういった科学的知見をもとに、節度ある適度な飲酒としては、1日平均純アルコールで20g程度(上の単位にして、1.4ドリンク)を推奨しています。また、現在飲酒していない人が無理をしてこの量まで飲むことは推奨していません(※2)

ちなみにお酒をコントロールする方法として、「1週間のうち6日はお酒を我慢して、残りの1日で大量に飲んでストレス解消しよう!」と思っている方もいるかもしれませんが、それはリスキーです。1~2時間以内に3ドリンク以上を平らげてしまう飲み方は、“ビンジドリンカー(binge drinker)”と呼ばれます。簡易に和訳すると、“ばか飲み”です。これをしてしまうと、過剰な食欲増加につながったり(※3)、心筋梗塞後の患者さんなどでは突然死のリスクが2倍になるなどの報告が挙がっているので注意してください(※4)

「少量だけ飲める人」は「飲み方がうまい人」かもしれない

今回ご紹介した研究を、意外に思われた方もいるかもしれません。「少し飲めば体にいいらしいよ」というのは飲酒の免罪符にすぎない、と感じる方もいらっしゃるでしょう。ただ、海外でも、日本でも、少量のアルコール摂取が体に良いという事実は科学的に正しいと言えます。

とはいえ、この研究には落とし穴もあります。多くの研究は、「普段どのような飲酒をしていますか?」と聞いたうえで、その人たちの健康状態を何年間も追跡しているものです。ですから、「少量のアルコールが体に良い」という結果は、もしかすると「少量だけに抑えられる、飲み方のうまい人」の性格そのものを反映している可能性があります。つまり、これを読んでいただいた皆さんが「少量飲酒」を達成できたとしたら、それができる性格や意志そのものが、健康にいい行動や生活習慣につながるかもしれません。