広告代理店にお願いして、PRのキャンペーンを行うこともノー。自分の頭で考えるしかない中で、浮かんだのが、ムーブメントを作っていくことだった。ヒントは、松本氏の語った一言だった。

「フルグラをシリアルと呼ばないで、と言ったんですね。これはまったく違ったブームになる。おいしいというイメージが薄い、アメリカのシリアルと一緒にしてくれるな、と」 

そして2013年、藤原さんが掲げたのが、「朝食革命」という言葉だった。これが女性の社会進出など時代の変化と相まって、消費者に強く響く言葉になっていく。松本氏の指示で商標登録を取った。

1提案に書類は1枚

お金を使わず、どうやって認知を広げていくか。ホテルの朝食ビュッフェでのサンプリング、記者会見に松本氏を担ぎ出す、などさまざまに動いた。そして伸びが始まった頃、藤原さんが動こうと考え始めたのが、設備投資。欠品しないためには、工場を作ってもらわないといけないからだ。

「売り上げ目標から逆算すると、1年半前には投資をしないと、ということがわかるわけです」

悠長に承認を待っている時間はなかった。そこで、松本氏に直接、意思決定してもらった。判断を仰ぐとき、注意していたことがある。見てもらう書類を極力、シンプルなものにすることだ。

「1案件、1枚が基本。言われていたのは、タイトルを見ればなんの話かわかる。最初の3行を読めば、何が言いたいのかがわかる。もう少し細かく知りたいと思ったらその下を見ればわかる。そのくらいのものが一番いいね、と」

グラフは、興味がありそうなときにつけた。資料は、松本氏好みの仕様にしておいた。

「お金の数字が好きなんです。認知率とか、ブランドイメージとか、そういう数字にはこだわりはない。でも、市場規模とか、どこどこの売上がいくらとか、そういうことにはアンテナが立つ」

全部は聞かない。やりたいことは粘る

2014年、フルグラに携わって3年目に部長に。売上は134億円になっていたが、目標は500億円になっていた。

「その頃から、ちょっと藤原さん、と呼ばれることが多くなりました。何か思いついたとき、これをやったらいいんじゃないか、と直接、指示が次々に来るようになりました」

ただ、全部を聞いていたら、振り回されてしまう。