1月5日、安倍晋三首相は経済3団体の新年祝賀パーティーであいさつし、「原稿にないことを話す」と前置きしたうえで、好景気の話題で会場を沸かせた。有力企業のトップが経済の先行きを楽観視するなかで、安倍首相があらためて要請したのは「3%の賃上げ」。好景気が「給料」に反映されるのは、いつなのか――。

株高は「アベノミクス」の成果なのか

1月5日、日本経済団体連合会、日本商工会議所、日本経済同友会の経済3団体の「2018年 新年祝賀パーティー」が都内のホテルで開かれた。来賓としてあいさつした安倍晋三首相は、「通常、私は原稿を持ってくるのですが、今日はちょっとその原稿を置いてまいりましたので、自由にやらせていただきたいと思います」と前置きしたうえで、こんな話題で集まった経営者たちを喜ばせた。

「関西のあるデパートは、開店の前になんと6000人のお客さんが並び、高級品の動きもいい。東京のデパートも非常に高い、榊原(定征、日本経団連会長)さんが買うような福袋、これがたくさん売れた」

そのうえで、最後には「しっかりと経済の好循環を回していくためには、今年の賃上げ、はっきり申し上げまして3%お願いしたい」と述べ、経済界を持ち上げながら、あらためて3%の賃金引き上げを訴えた。

安倍首相が経済3団体の新年会であいさつをするのは恒例のことだ。だが、その表情は例年になく晴れやかだったように思う。総選挙での大勝や、26年ぶりという株高を好感しているのかもしれない。

2018年に期待を寄せるのは安倍首相だけではない。今年の干支、戌(いぬ)には「戌笑う」という相場格言があり、縁起のいい年とされる。ちなみに昨年は申(さる)で、「申酉(さるとり)騒ぐ」とされる。英国の欧州連合(EU)離脱決定やトランプ米大統領就任など、たしかに波乱の年だった。

キヤノン・御手洗会長「今年の目玉はAI」

2018年はどんな年になるか。格言通り「笑える」年になるか。経済界の有力経営者たちが、新年会で披露した見通しを紹介しよう。

日本経団連の名誉会長、御手洗冨士夫キヤノン会長は今年の景気拡大に期待を寄せる一人。「IMFの世界経済見通しによると、世界経済の成長率は、2016年は世界金融危機以来最低の3.2%だったが、2017年は3.6%、2018年は3.7%へ上昇すると予想し、経済活動の世界的上昇は強まっていると指摘しています。去年よりも順調に拡大していくと思います」と語る。

キヤノンは昨年、カメラや複合機などの既存事業が好調で、医療や産業機器などの新規事業がこれに加わり増収増益だった。今年の目玉はAIだ。「これからAIの時代になりますから、どうやってそれを製品化していくか。それが競争力の源泉になると思います」という。