EV普及でガソリンスタンドは不要になるか
ユダシティが有望なビジネスだと見られている理由の一つには、技術革新の流れが速くなっていることがある。進化のスピードが速いため、クルマの開発現場で求められる技術水準と、大学で教えられる教育内容にギャップが出始めている。ユダシティはそのギャップを埋めることがビジネスになると判断したのだ。
これはエンジニアに限った話ではないのだが、情報や知識が速いスピードで変化していく現代では、いったん大学を卒業したら終わりというのではなく、常に最新の情報を学んでおかなければならない。自分の知識が古びて、技術革新に付いていけなくなると、職を失うリスクが高まる。いまや絶えず勉強を求められる時代になった。
いずれにせよ、変化を恐れ、これまでの価値観に縛られていると時代の流れから落伍してしまうことは間違いないだろう。
日産自動車で最高執行責任者(COO)を務めて現在も同社取締役として残る産業革新機構会長の志賀俊之氏も自動車産業の流れをこう予測する。
「2050年に消えるものは、ガソリンスタンド、運転免許証、信号機、自宅の駐車場ではないでしょうか」
その心はこうだ。EVの普及によってガソリンスタンドは不要になる。自家用車を使わない時間はシェアカーとして貸し出す。インターネットに常時つながっているので指示を受けて無人の完全自動運転によって借りたいお客のところに勝手に動いていけば、自宅の駐車場は要らなくなる。優れた予知機能を持つAIが搭載された完全自動運転車であれば信号の指示に従わなくても事故は起こらない。そして人間が運転しないので、免許証も要らなくなるといった具合だ。
この動きは「CASE」というキーワードで端的に象徴される。Connected(つながるクルマ)、Autonomous(自動運転車)、Shared(配車サービスなど)、Electric(電気自動車)の頭文字を取ったもので、独ダイムラーが使い始めたキーワードだ。
こうした動きが進んでいけば、大衆車向けの自動車メーカーは、性能・デザインの良いクルマを作るだけでは生き残れないだろう。付加価値は、作ることからサービスに移る。消費者がクルマをいかに快適に利用できるかを意識した「モビリティサービス」を提供していかなければ、自動車会社の存在感はなくなってしまう時代が近づいている。