グラスの内側にある細かい気泡の正体
「ここに2つのビールがあります。同じ500円を払って、最高にうまいビールとそうでないビールのどちらを飲みたいか? 僕が現場で問いかけ続けているのはそれだけです」
サントリー東京支社第2支店の小西悠さんは「すべてはお客様にとってどうか」から始めるべきだと熱を込める。
担当は、都内を中心とする飲食チェーン店約50社。ザ・プレミアム・モルツ樽生(業務用の樽詰め生ビール)の「飲用時品質」の向上に取り組んでいる。飲用時品質とは、飲食店などでビールを提供する際の状態を表すサントリーの社内用語だ。理想的な状態でグラスに注いだとき、プレモルのおいしさが最大限に味わえるというサントリーの主張がこの言葉には込められている。
小西さんの取り組みの舞台になったのは、東京都目黒区に本社があるMUGENの直営店。炉端焼き居酒屋「なかめのてっぺん」をはじめ、同社は首都圏と名古屋に12の飲食店を展開している。このうち創業店の「なかめのてっぺん本店」と「なかめのてっぺん渋谷店」は、ザ・プレミアム・モルツ樽生のおいしさと、グラスに注いだときの美しさへのこだわりをサントリーから認定された「超達人店」でもある。
直営店はいずれも人気店ぞろいで、ビールの売り上げも堅調だった。しかし、同社の担当となった小西さんは、そんな“良店”にも飲用時品質向上の余地があることを見つけた。
「運ばれてきたビールを見ると、グラスの内側に細かい気泡が付着している。これは食洗機によるグラス洗浄が原因です。食洗機では料理皿なども洗うため、機械内部に油が残り、グラスを洗う際に付着してしまいます。油が付着したグラスにビールを注ぐと、そこから気泡が生じるため、本来のクリーミーな味わいが損なわれてしまうのです」
まずは食洗機によるグラス洗浄を手洗いに替える。さらにビールの注ぎ方に細心の注意を払えば飲用時品質は必ず向上する――小西さんはそう考えた。