「手洗い」で店を回せるのか

この改善を提案した相手は、MUGENの内山正宏社長。小西さんは、説得材料を集めるためにモニター調査を実施した。調査は外部の調査会社に依頼。モニターがMUGEN直営店を訪れ、ザ・プレミアム・モルツ樽生を注文して飲用時品質を評価した。

取材場所になった「なかめのてっぺん」を展開するMUGENの内山正宏社長

評価ポイントは、「クリーミーな泡」「泡とビールの割合」「泡ライン」「おいしさ」などがあり、それぞれを点数化して各店の飲用時品質を見える化した。データに加え、評価内容を裏付ける資料として、提供直後のビールの様子を撮影した画像も用意した。さらに、小西さん自身も全店舗を回って調査結果の裏取りをした。

準備を整えた小西さんは、内山社長に生ビールの提供方法についての店舗診断を実施したことを伝えた。すると3カ月に一度開かれる店長会議にゲストとして出席し、冒頭30分ほどを使ってプレゼンテーションができることに。

店長会議当日、小西さんは12の直営店の店長が見つめる中、調査の結果を示し、飲用時品質を高めるには、食洗機ではなくグラスを手洗いすることの重要性を説いた。

このとき小西さんは、まずは内山社長に飲用時品質についてさらなる向上が目指せること、そのために必要なことを理解してもらうという2つの目標を設定。だが、内山社長にも店長たちにも、好意的な反応は見られなかった。

「どの店舗も手洗いにするのがいいとはわかったものの、実際にそれで店を回せるのかという疑問がありました」

と内山社長は振り返る。