自宅の冷凍庫に「保冷剤」をためていないだろうか? デパ地下や高級スーパーでスイーツや惣菜などを購入すると無料でついてくる保冷剤。数がまとまればフリマアプリで売れるそうだが、それは節約ではなく「プチ浪費」だ。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子氏が、「チリツモ消費」に警鐘を鳴らす――。

なぜ保冷剤が「山」のようにあるのか?

お金を貯めたいご家庭にとって大敵ともいえるのが、日々のちょっとした消費行動の積み重ね。高額な買い物をしているわけではないので、「これくらい使っても、大丈夫じゃない?」とついつい浪費を続けてしまいがちだ。

しかし、1回に使う金額が少額であっても、それが頻繁になるとかなりの金額になる。恐ろしいのは、そんな「プチ浪費」の習慣が他の消費行動にも影響を与えてしまうことだ。今回は、そんなありがちな「チリツモ消費」が家計に与える影響と対策について考えてみよう。

都内在住、会社員Aさん(49)のご家庭もチリツモ消費で浪費している典型例だ。

「専業主婦の妻は私が会社から帰る頃を見計らって、LINEで『今日は一生懸命に家事して疲れたからご褒美のスイーツ』ということがしょっちゅうなんです。大して働いてないのに、ショートケーキ、シュークリーム、モンブラン、チーズケーキ……。コンビニスイーツじゃ満足できないそうです。私は甘いものは苦手なので、妻と子ども(小学4年女子)の分だけ、乗り換えのターミナル駅のデパ地下で買います。総菜を買うこともあります。買うたびに増えるのが、保冷剤です。最寄り駅が遠いので保冷剤の数も通常より多い。ご褒美スイーツという名の浪費のたびにもらう保冷剤で冷凍庫は季節に関係なくパンパンです」

▼「メルカリ」で保冷剤は500円で売れた!

Aさんの妻がスイーツ購入に走ったきっかけは、友人から寄せられた情報だった。

近年、若者や女性を中心に人気が沸騰しているフリーマーケットアプリ(スマートフォンを使って衣料品や雑貨などを個人売買する)を使えば、“使用済み”の保冷剤がお金になる。そんな“衝撃的”な内容だった。

Aさんの妻は、実際にフリマアプリ「メルカリ」で大小とりまぜて出品したところ、「20~30個で500円(送料別)」で売ることができたという。「本当に売れる! お金になる!」。これが“免罪符”となり、スイーツでプチ贅沢することへの罪悪感がすっかり消えてしまったのだ。

聞けば、保冷剤には1年を通して安定したニーズがある。夏は熱中症対策やお弁当の保冷に、冬は発熱で体を冷やす道具として使える。しかも、形や大きさがまちまちであったほうが喜ばれるという。

実際に「メルカリ」で検索してみると、トイレットペーパーの芯や卵の空きパック、飲み終えた牛乳パック、ペットボトルのキャップ、穴の開いた靴下など、「普通は捨てるモノ」も大量に出品されていた。おそるべし、メルカリ。ニーズがある限り、ビジネスというのはどんなところにでも成り立つということだろう。