今、すべきは投資か節約か
【藤川太(以下、藤川)】私はファイナンシャルプランナーとして家計の相談を受けているのですが、景気の変動によって相談内容ははっきりと変わってきます。たとえば景気が悪い時期は、「お金が貯まらない」「やりくりに困った」「節約したい」という、「不景気型」の相談がほとんどです。いっぽう、今のように「景気がいい」とされる時期は、「投資をしたい」「家を売買したい」など、大きなお金を動かす「好景気型」の相談が多くなります。菅井さんも似たような変化を感じているんじゃないですか?
【菅井敏之(以下、菅井)】すごくよくわかりますよ。「アベノミクス」の影響で、「好景気っぽい空気」を感じてしまった人が多いのでしょう。私は銀行員を辞めて不動産投資家になったという経歴があるので、「不動産投資するにあたって、どうすれば自分もお金を借りられるだろうか」「不動産経営のノウハウを教えてほしい」といった、投資初心者からの相談が増えました。
【藤川】なるほど。でも、実はこの変化って、アベノミクスがはじまる前からなんですよ。長く家計の相談に乗っていて、景気が動きはじめる半年くらい前からお客様の相談の傾向が変わってくることに気づいたんです。今回私が「あれ、最近お客様の相談内容が違うな」と感じたのは、まさに民主党政権が終わって、自民党政権に替わろうというタイミングでした。そこを境に相談内容が変わってきて、自民党政権になってからは明確に「好景気型」の相談一色になったという感じです。
【菅井】すごく面白いですね。そう言われると、今の相談内容が気になっちゃうな。どうなんですか?
【藤川】節約系の相談は増えてきていないので、まだ景気は大丈夫なんだと思いますよ(笑)。でも、最近のお客様の発言を聞いていると、バブルの頃を思い出してちょっと心配になります。これまで慎重だった人まで、「全然株価が下がらないってことは、強気で投資するべきでしょうか!」と鼻息荒く言ってきたりして。今は、そういう人たちに「ちょっと一旦落ち着きましょう」と一生懸命水をかけている最中です。
【菅井】特に30代、40代のサラリーマンは、「退職金がもらえないかもしれない」「年金の支給時期がもっと遅くなるんじゃないだろうか」といった将来への不安を抱えていますから、その閉塞感から脱却したい気持ちが強いんですよね。だから、「老後に勤労所得以外の別収入を得たい」「収入を複数化したい」と感じて、不動産投資に興味を持つんです。ただ、都内の不動産価格はかなり高騰していて、表面利回りでいうと4~5%程度。普通のサラリーマンがうっかり手を出すと、大変なバブルをつかまされてしまう状態です。そこで、ちょっとでも不動産投資がわかっている人は、6~7%の表面利回りがある地方の中核都市の物件に注目しています。北海道なんかは今、投資家が入り乱れて大変なことになっていますよ。また、銀行も「プチバブル」なんて言われてお金を貸すことに躍起になっていますから、「借りてくれ」ってお客様を煽るんですよね。ただし、借りられるのは一部の信用のある人だけ。そこにいろんな銀行が集まって、そうでない人はまったく借りられないという一極集中です。