地方議会選挙で「政策吟味」なんてムリ

7月2日投開票の東京都議会議員選挙も終盤を迎える。選挙戦で大波乱が起きなければ、都民ファーストの会と公明党で過半数獲得という予想が多いようだ。僕は選挙予想は専門領域ではないので予想は横に置いておく。

しかし有権者から支持を得るための政治活動については一家言ある。組織も金もない中で選挙、選挙を通じて、一から政党を作ってきたからね。そんな経験から言えることは、有権者から支持を得るプロセスで重要なポイントは、自分が「積極的に」支持を得るといよりも、相手や現状に対して有権者が不満を募らせ、その「反射として」自分に支持が来るというもの。

今回の都議会議員選挙では「築地市場の移転問題だけが争点ではない」とか、「政策論争が見えない」とか自称インテリが相変わらずもっともらしい「いちゃもん」を付けているけど、選挙なんて、特に地方議会の選挙なんて政策をじっくりと吟味する選挙じゃない。

メディアや自称インテリは、選挙のたびに「政策をしっかり吟味しろ!」と偉そうにのたまうけど、地方議会における政党の主張なんて、医療・福祉・教育を充実します! と皆、似たり寄ったりのことを主張している。今回の各政党の公約も大差はないよね。

ところが大阪においては、僕は、他の政党では絶対に飲めない大阪都構想というものを掲げて選挙を戦った。これこそが純粋な政策選択選挙。それでもその時はワンイシュー選挙(論点をひとつだけに絞った選挙)はダメだ、なんて自称インテリから批判を受けたな。

普通の有権者は、選挙についてもっともらしく語ることで飯を食ってる自称インテリとは違う。普通の有権者は日々の生活のための仕事がある。各政党の政策の細かなニュアンスまで把握することなど不可能だ。

しかも各政党が掲げる政策のうち、賛成できるものもあれば賛成できないものもある。政党間をまたがって、この政策は自民党がいいけど、この政策は民進党だよね、ということもよくある。これだけ複雑化した現代社会において、ある政党が掲げている政策は100%全て賛成だ! なんてことは、その政党の熱狂的信者じゃない限りあり得ない。

各政党の政策を一つ一つ細かく吟味したところで、どの政党に投票すべきかなんて論理的な結論には至らないんだよね。

だから、自称インテリだって各政党の各政策を緻密に分析することなどしない。主要政策、しかも話題になりそうなところを、ちょこちょこっと勉強して、もっともらしく語っているだけ。有権者には政策を吟味しろと言いながら、自分たちは吟味していない典型的な口だけ野郎なんだよ。

選挙で争点を作ろうと思えば、必然、ワンイシューに近づいていく。論点が増えれば増えるほど、各政党の主張が重なったり、この論点では自民党に賛成、この論点では民進党に賛成とクロスすることになったりして、どの政党を選ぶべきかがよく分からなくなってくる。

だから有権者にきっちりとどの政党にすべきかを判断してもらおうと思えば、選挙はワンイシュー選挙の方が合理的なんだよね。

そして選挙がきちんと機能するかどうかは、有権者がどこまで選挙に関心を持ってくれるかどうかに全てはかかっている。組織票をがっちりと獲得できる政党にとっては、できる限り投票率は低い方がいい。そういえば、一般の有権者は家で寝ていてくれた方がいいと本音をつい漏らして、すさまじい批判を受けた政治家もいたよね。

特定の組織が自分たちの要望を実現するために、また補助金を確保するために、特定の政党を支援する。特定の政党は支援の見返りに、特定の組織の要望を実現し、補助金を確保する。これが今の日本の政治の姿。だから特定の組織は選挙になると必死になって選挙運動をやるんだ。

他方、一般の有権者は政治によって何か利益を受けるという感覚がないから選挙に無関心。でもこの無関心層の人数の方が圧倒的に多い。

組織とがっちり繋がっている政党にとって、一般の有権者が選挙に出向くとややこしい。一般の有権者が選挙に行かず投票率が低ければ、いつもの組織のメンバーがしっかりと投票に行ってくれさえすれば当選する。一般の有権者が寝ていてくれたらいいというのは組織票狙いの政治家の紛れもない本音だ。

僕が結成した大阪維新の会は、特定の組織に所属していない一般の有権者に支えられた。フランス大統領マクロン氏率いる共和国前進もそうだろう。小池さん率いる都民ファーストの会もそうだ。

当選を確実にしたい組織票頼りの政治家にとっては、一般の有権者が投票に行くことは望ましくない。しかし地域全体、日本全体の民主主義にとっては出来る限り多くの一般の有権者に投票を考えてもらうことが望ましい。そういう意味では、ここまで全国的に都議会議員選挙が注目されるきっかけとなった都民ファーストの会の存在は、日本の民主主義深化への貢献度が高い。いまだかつて都議会議員選挙がここまで注目されることはなかった。