「そんなことは、小池さんがとっくにやっている」
7月の東京都議選が2カ月後に迫り、自民党が戦闘モードに入っている。小池百合子都知事が事実上率いる地域政党「都民ファーストの会」の勢いが衰えない中、自民党東京都連はかつてない危機を迎えているためだ。都連の要請を受けた参院自民は都議選では初めて独自の選対本部を設置し、党所属国会議員を前線に投入する異例の支援態勢を敷く。しかし、昨年夏の都知事選でも見られた厳しい「締め付け」に対する自民党員の視線は今回も冷ややかで、早くも党内からは反発の声も漏れている。
4月21日、東京・新宿駅西口に自民党の女性国会議員が並んだ。小池氏が鎮座する東京都庁の近くで参院自民党が企画した街頭演説会だ。橋本聖子参院議員会長をはじめ山東昭子元参院副議長ら女性議員が次々にマイクを握る。2020年東京五輪・パラリンピックや福祉政策など、それぞれの得意分野を訴えていった。
だが、この企画に対しては党内から反発の声も漏れる。「参議院自由民主党街頭演説会について」と題する文書が党所属議員に送られたのは4月12日。橋本参院議員会長、吉田博美参院幹事長の連名で、演説会への参加を要求したのだ。
ある自民党ベテラン秘書はこう語る。「文書は、議員だけでなく、秘書や後援会の方など各事務所から2人以上の参加を求めたもの。いきなり『来い』と締め付けられても議員のスケジュールは調整できず、本来の秘書業務もある。正直、そんな余裕はないというのが本音だ」。
当日の演説会に対する批判も聞かれた。トップバッターの橋本氏は自民党への支援を力強く求めたものの、山東氏が「やはり女性が東京の街を作っていく、若い人たちが東京はすごいな、という環境を今こそ作っていかないとならない」と力説すると、聴衆からは「だから女性の小池都知事が頑張っているじゃないか」との声があがった。丸川珠代五輪相は檀上の新宿区選出の自民都議を紹介した上で、「今日は東京の未来を訴えたい。(東京の)段差をなくしていく。温かい街にしていく」と力説したが、この日は小池氏が設置した東京の未来を知事と各界の若者が語りあう「東京未来ビジョン懇談会」第2回会合が開催されていた日。街の段差を解消するというスローガンも小池氏が年頭に表明していたもので、「そんなことは、もう小池さんがとっくにやっているよ」(40代の男性会社員)との声も漏れた。
国会議員が新宿駅西口で支援を求めるチラシを配布して回ったものの、演説に足を止める人は少なく、熱心に耳を傾けたのは「300人弱。ほぼ動員ではないか」(別の秘書)というものだった。
自民党東京都連に所属する国会議員の一人は「全国の国会議員には都内に在住している200人分の名簿を出すように要求している。参院の選対本部には順番で国会議員が一日張り付き、エリアを割り振って支援態勢は万全だ」と意気込む。しかし、東京以外の所属議員は複雑な思いを抱いている。共通するのは昨年の都知事選の二の舞だ。