新テストは受験生の経済格差も影響する

【三宅】過渡的な措置は必要ということですね。その間は民間のテストで話すと書くは測定するしかない。4技能で受けて、そのスコアを考慮するということになりますね。

【吉田】それは大学によって、どういう考慮をするかは違ってくると思います。これまでも国公立大学はだいたいセンター試験を受験生に課していました。今後も、新しいテストを必須にするのかどうか。常識的に考えれば、課さないとおかしいと思いますが、その点数の扱い方は各大学に任せることになるかもしれない。

たぶん、大学側はもう「自分たちはこういう風にやりますよ」という方針を打ち出してきます。「こういうテストのスコアを重視しますよ」という方法は始まっていますが、それが一番現実的なやり方なのではないでしょうか。

『対談(2)!日本人が英語を学ぶ理由』三宅義和著 プレジデント社

【三宅】新テストは、現役であれば21年4月に入学するいまの中学3年生から対象になります。原案では、英語の民間試験は2回まで受けられ、結果の良いほうを採るということですね。一発勝負ではなくて、複数回のチャレンジでスコアを上げていくことができます。費用負担など経済的格差の問題もあるでしょうが。

【吉田】やはり議論でも「何回でもいい」というわけにはいかないだろうということになっています。回数を限定しないと、いまご指摘された経済格差のほかにも、首都圏と地方では受験会場が近くにあるかないかといった問題もあります。そうした受験機会平等もめざさなければなりません。

ただ、民間試験の中には内容がビジネスや留学を想定しているものもありますから、学習指導要領に沿った問題になっているかを確認する必要があります。さらに、そのスコアを各大学が個別試験の出願資格や試験免除、得点の加算というように、どう使うかはこれからの課題ということになります。

受験時期にしても、あまり早めてしまうと、高校教育が混乱します。もう試験のための勉強しかやらなくなってしまって、本来の授業の目的から逸脱することになってしまいます。今回の原案を踏まえ、6月に実施方針が公表されるでしょうから、それまでにより細かい議論を進め、環境整備、条件整備を詰めていく必要があるでしょう。

(岡村繁雄=構成 澁谷高晴=撮影)
【関連記事】
「起きてから寝るまで英語表現」で会話の達人になれるか
男は女にボロ負け! TOEIC平均スコア140点差の謎
これからの大学の教育と人材育成が大事になってくる理由
TOEICスコア別「1週間で1000語」英単語をラクに覚えるコツ
高得点への近道! 新しくなった「TOEIC」攻略法