<答える人>

●Affectiva CEO ラナ・エル・カリウビ
エジプト出身。 英ケンブリッジ大学にて博士号取得し、米マサチューセッツ工科大学で感情AIのリサーチサイエンティストを務めた後に起業。 75カ国450万以上の人間の表情、400億件の感情データを統合した感情分析ツールを開発。市場調査・広告、モバイルゲームなどの分野で応用が進む。

 

──感情認識技術とは?

【ラナ】人間は感情を声のトーンや出し方、顔の表情などを使って伝えます。なかでも感情と相関関係がもっとも強いのは、顔の表情。人間の顔は、45個の筋肉で動いています。私たちは、その動きをコンピュータで分析して、表情から感情を認識できるアプリケーションを開発しました。分析するのはAI(人工知能)です。75カ国以上450万以上の顔をコンピュータにインプットして、複雑な人間の表情を読めるようにトレーニングを行いました。それによって、「うれしい」「退屈だ」「驚いている」「興味深い」など、8つの大きな感情を識別します。

──人間の表情は複雑だ。

【ラナ】たとえば笑顔は5種類に大別されます。口角の上がり方や強度はどうなのか。すぐに笑っているのか、じわじわ笑っているのか。口だけでなく目も動いているのか。それらのパラメーターから細かく表情を判断しています。

──同じ表情でも、国や地域によって意味するところが違うことがある。

【ラナ】私たちは文化的なベンチマーキングを取っています。各地域で感情の度合いを比較したところ、ラテンアメリカやヨーロッパの人なら中程度の感情を示す表情が、日本人なら高いレベルの感情を示すという傾向がわかりました。感情認識では、こういった違いも考慮しています。

──感情認識の精度は、どの程度か。

【ラナ】一般的な表情なら90%以上の正確さを担保しています。目を細めたり、唇をかみしめるといった複雑な表情まで含めても80%前後。私たちは表情に加え、声のトーンの分析にも投資を始めました。両者を組み合わせれば、さらに正確さが高まるでしょう。

──感情認識技術は、いまどのようなところで使われているのか。

【ラナ】すでに活用が始まっているのは広告やメディア分野です。企業は広告の効果を検証するために、事前に広告を被験者に見せます。ただ、目が笑っていないのに、リップサービスで「いい広告ですね」と回答する被験者もいる。真実の感情はどこにあるのか。それを明らかにするために私たちのサービスが使われています。マクドナルドやトヨタ、ユニリーバ、ケロッグといった企業で試されています。