弘兼憲史の着眼点

▼非創業家社長の内に秘めた情熱

創業家と企業の関係はついてまわるものです。たとえばトヨタ自動車では、豊田家以外の社長が3代続いた後、創業者の孫にあたる章男さんが11代目の社長に就きました。「大政奉還」などといわれたのも記憶に新しいでしょう。

辻「虎ノ門エリアは、世界から人・モノ・金・情報を惹きつける『国際新都心』となる高いポテンシャルを持っています」

辻さんの前任者、森稔さんはあの森ビルを築き上げたカリスマです。私がお会いしたときは、都市論を熱心に話されました。人を巻きこむパワーに溢れた人でした。

一方、辻さんは冷静で、内に情熱を秘めたタイプ。森さんは自分とタイプの違う、理系出身の辻さんに任せたのでしょう。

六本木ヒルズの防災機能の高さは耳にしていました。東日本大震災のとき、周囲に住む知人たちは六本木ヒルズに駆け込み、臨時事務所にしていたそうです。

街にはそれぞれ個性、味があり、すべてを再開発すべきだとは思いません。ただ、辻さんのおっしゃるように耐震機能に加えて、電気、食料などのライフラインとなるヒルズのような再開発は、東京という街を強くすることでしょう。

弘兼憲史(ひろかね・けんし)
1947年、山口県生まれ。早稲田大学法学部を卒業後、松下電器産業(現・パナソニック)勤務を経て、74年に『風薫る』で漫画家デビュー。85年『人間交差点』で第30回小学館漫画賞、91年『課長島耕作』で第15回講談社漫画賞、2003年『黄昏流星群』で日本漫画家協会賞大賞を受賞。07年紫綬褒章受章。
(田崎健太=構成 門間新弥=撮影)
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