規制と法人税が東京の発展を妨げる

【弘兼】ようやく羽田空港が国際線を充実させるようになりましたが、かつては成田国際空港が主でした。成田からだと都心まで行くのに2時間以上かかる。それを嫌って、多国籍企業のアジアの責任者が集まる会議は、東京で行われなくなったと聞いたことがあります。

【辻】では、東京に国際競争力がないかというと、そんなことはない。都市で比較すると、GDP規模は世界最大。ニューヨークの1.5倍ぐらいあります。東京の中心市街地のオフィス面積はニューヨークのマンハッタンの倍、上海の20倍ほどある。

【弘兼】まだ伸びしろはあると。

オリンピックを契機に「東京」を世界4位から1位へ

【辻】東京の人口は約1300万人。巨大なうえに、ポテンシャルがある。あとはそのポテンシャルをどう生かすか、なんです。世界中の目が東京に集まる20年には、世界に類のない都市づくりによって東京の、日本の底力を世界に見せつけたい。まさに今は「勝負」のときです。

僕が知る限り、エグゼクティブの方はみな東京が好きです。食べ物がうまいし、水も空気も綺麗で安全である。しかし、ビジネスがやりにくい規制がある。一つのビジネスを立ち上げるのに、いくつも判子をもらいにいかなければならない。安倍政権がやろうとしている、国家戦略特区の中で規制緩和していくのも一つの手段でしょう。あるいは法人税の減税。日本はアジア主要諸国と比較するとコストがすごく高い。それを同じレベルまでにすれば、東京を選ぶ企業はたくさん出てきます。

【弘兼】さて、森ビルの16年3月期売上高は2591億円、連結営業利益は688億円。3年連続で過去最高を記録しています。

【辻】賃貸でオフィス・住宅ともに高い稼働率を維持したことに加え、虎ノ門ヒルズなどの住宅分譲が好調に推移しました。

【弘兼】将来的に株式上場は考えておられますか?

【辻】上場というのは資金調達の手段になりますが、現時点では具体的に考えていません。上場していないのは、街づくりという独特な仕事による面も大きい。六本木ヒルズを完成させるまで、17年間かかりました。もし上場していれば、「なんでこれほど長い時間、遊んでいる土地があるんだ、売却するなり利益を出せ」という話になったかもしれない。

【弘兼】六本木ヒルズのようなこれだけの大規模、かつ長期的な開発はできなかったかもしれませんね。

【辻】資金調達が必要であれば、REIT(不動産投資信託)を活用することもできますし、個々のプロジェクトで森ビルの開発理念を共有してもらえる投資家を集めることもできる。また、一方で、地方や海外のコンサルティング業務のお話もいただいています。ヒルズなどの成功によって、森ビルの開発力が評価されていることは、大変ありがたいことです。