開業20年を迎えた六本木ヒルズ(東京都港区)が好調だ。2022年度の商業施設全体の売上高は過去最高となり、国内有数の集客力を誇る。開発・運営を手掛ける森ビルは、今年秋に虎ノ門と麻布台に2つのヒルズを立て続けにオープンする。なぜ六本木ヒルズは成功したのか。これからの東京に必要なものは何か。辻慎吾社長に聞いた――。
森ビルの辻慎吾社長
撮影=門間新弥
森ビルの辻慎吾社長

開業20年で過去最高の人出を記録

――2003年に開業した六本木ヒルズは、開業20年を迎えた現在も成長を続けています。なぜ成長を続けられるのでしょうか。

街はつくるだけではなく、手塩にかけて育んでいくことが重要です。通常、街の「鮮度」は開業時が最も高く、時間の経過と共に落ちていく。新しい街ができて初めて見るので、「こんなお店がある、美術館や映画館、いろいろな施設がある。見にいこう」というわけです。

一方で、六本木ヒルズをおもしろいと感じ、ファンになってくれた人が残り、また新しい人が来る。これを繰り返していくことで、人々との絆は時間の経過と共に深まっていきます。

そこで、六本木ヒルズのコミュニティに根差したお祭りやクリスマスといったさまざまなイベントや店舗の入れ替えなどによって街の鮮度を保ちながら、人々との「絆」を深めていくことができれば、街全体の価値を継続的に向上させていくことができます。

「オフィス、住宅、商業施設、文化、緑」が揃う街

六本木ヒルズには、開業から20年が経過する現在でも年間約4000万人の人々が訪れていますし、昨年のクリスマスイブの人出は過去最高の33万人を記録しました。商業施設の売り上げも2022年度が過去最高の年間売り上げを達成しました。

これらの数字が、時間の経過と共に磁力を増していく、まさに「都市をつくり、都市を育む」という森ビルの都市づくりを如実に表していると捉えています。

――もともと六本木ヒルズはどのような考えでつくられたのでしょうか。

森ビルは30年以上も前から、「東京は、世界の都市と国際都市間競争を繰り広げている」とずっと言い続けています。それを勝ち抜いていくためには、従来型のオフィス街、住宅街、商店街ではなく、グローバルプレーヤーが求めるさまざまな都市機能が徒歩圏内に集約されたコンパクトシティが必要だと考えています。

森ビルが理想とする都市は、オフィス、住宅、商業、文化施設、緑、公園といった都市機能が高度に複合したコンパクトシティです。六本木ヒルズもその考え方でつくっています。また、用途が複合しているため、住民やオフィスワーカーだけでなく、遊びに来る人もいる。いろいろな人がいて、層が広いから、街がどんどん活性化していきます。