新たなヒルズにも根付く「文化を軸にした都市づくり」

――今年の秋には麻布台ヒルズや虎ノ門ヒルズ ステーションタワーの開業も予定しています。2つのヒルズの開業は、東京にとってどんな意味がありますか。

森ビルはこれまでも、東京という都市に足りないもの、これからの時代に必要なものを整備してきました。

六本木ヒルズ開発時の社長であった森稔は、「文化のない都市は世界の都市間競争に勝てない。東京には文化が足りない」と言い続けていました。ロンドン、ニューヨーク、パリ、どの都市も代表的な美術館があり、文化があります。東京はもっと文化に力を入れるべき、文化に接する環境をつくるべきという考えで、六本木ヒルズでは街のコンセプトを「文化都心」としました。

本来なら高収益が期待されるタワーの最上層に、森美術館をはじめとする文化・交流施設をあえて置いたのは、街のコンセプトを世の中に強く発信するためです。

文化を軸にした都市づくりの考え方は、虎ノ門ヒルズにも活かされています。今年の秋に開業する「ステーションタワー」の最上部には、情報発信拠点となる「TOKYO NODE」がオープンします。最先端のテクノロジーを取り入れ、企業やクリエーターが世界に向けて文化や情報を発信する「場」と「仕掛け」をつくる空間にしていきます。

森ビルの辻慎吾社長
撮影=門間新弥

「麻布台ヒルズ」は緑と健康、教育の施設に

また、「森タワー」は環状二号線、ステーションタワーは日比谷線「虎ノ門ヒルズ駅」と一体的に開発しています。都心部の既成市街地で都市インフラを整備するためには、再開発の中でやるしかない。100年、200年といった視点で都市づくりを進め、東京の都市力を向上させていくうえで、虎ノ門ヒルズが今後のモデルケースになると考えています。

一方、「麻布台ヒルズ」のコンセプトは「Green&Wellness」。緑とすこやかな暮らしをコンセプトに置いている街なんて、世界をみても他にありません。

高低差のある地形を生かし、低層棟の屋上を含む敷地全体を緑化しました。東京は緑が少ないと言われますが、麻布台ヒルズは6000m2の中央広場を含む約2.4haものスペースに緑があふれています。人が水と緑に触れられる、自然豊かな憩いの場をつくり出します。

拡張移転してくる慶應義塾大学病院 予防医療センターを核として、スパやフィットネス、フードマーケットといった施設との連携だけでなく、広場なども含めた生活のさまざまなシーンで心と体の健康をサポートする仕組みを構築することで、あらゆる世代の人々が健康で生き生きと過ごし、暮らし続けられる街づくりを目指しています。

また、麻布台ヒルズではインターナショナルスクール「ブリティッシュ・スクール・イン 東京」を誘致しています。校舎には室内プールや校庭もあり、都心でここまで大きなインターナショナルスクールは初めてです。これは東京の国際競争力を高める大きな武器になるはずです。