東京はまだまだポテンシャルがある

「都市について考える日」では、私の話の後に、都市づくりに関わるゲストをお迎えして、社員にむけた講演をお願いしています。今年のゲストであるデザイナーのトーマス・ヘザウィックさんからは、「森ビルほど真剣に都市について考えている人たちはいないし、こんなにも意見をぶつけ合ったこともない。しかし、その過程で自分の才能を超えて、良い街ができるのだと気がついた」という話をしていただきました。

東京が国際都市間競争に負けるということは、人々や企業が東京から去り、シンガポールや香港などへ行ってしまうということです。現在、森ビルのオフィスには多くの外資系企業が入っていますが、そのアジア拠点の多くは、東京ではなく香港やシンガポールにあります。これを何とかして東京に誘致したい。

東京は本当にいい都市で、まだまだ強い。働くにしても住むにしても遊ぶにしても、東京は他国の都市より絶対にいいんですよ。こうした強みをさらに伸ばして、弱い部分を底上げしていけば、東京はこの競争に勝てると思うんです。

しかし、そのためには、政官民の全員が「東京が熾烈しれつな国際都市間競争のなかにある」ということを強く認識し、世界の都市と戦っていかなければいけない。東京一極集中が問題視されることもありますが、日本経済のエンジンである東京が弱くなったら日本は終わりです。

森ビルの辻慎吾社長
撮影=門間新弥

都市間競争に勝ち抜くために森ビルがすべきこと

――国際都市間競争において、森ビルが果たす役割は何でしょうか。

東京は、面積も、人口も、GDPも、とても大きな都市です。オフィス面積もマンハッタンの2倍近くあります。なかでも、港区には大使館が多数立地し、外資系企業も多く集積し、外国人居住者も圧倒的に多い。さらに、緑豊かで、文化施設やミシュランの星付きレストラン、病院や学校も多く集積している。国際的で、多様性にあふれ、文化的にも豊かなこのエリアは、世界から人・モノ・金・情報を惹きつける「国際新都心」としてのポテンシャルが極めて高いと言えます。

麻布台ヒルズと虎ノ門ヒルズが誕生し、六本木ヒルズ、アークヒルズとつながる。それぞれ異なる個性を持つ複数のヒルズをビジネス、緑、文化、DXなどでつなぐことで、世界から人、モノ、金、情報、知恵を惹きつける強い磁力が生まれます。それが港区全体の、ひいては東京の価値向上につながっていくと考えています。

(構成=辻村洋子)
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