「ついでに」言うと、客が信用するメカニズムとは?
何ごとも、“きっかけ”が肝心である。せっかく重要人物に出会ったとしても、初期対応を誤れば、2度と付き合いがなくなるかもしれない。入口をどうするかで、その後の展開は大きく変わってくる。
その点、悪質商法の勧誘は抜かりがない。
今もなお、悪質業者によるリフォームトラブルは絶えないが、今年に入っても高齢者宅を訪れて「今のままだと、地震で家が倒れてしまいます」と嘘をついて不安を煽り、リフォーム契約をしていた男らが特定商法取引法違反の容疑で逮捕された(業者は2億円近くを荒稼ぎ)。
悪質リフォーム業者は、いかにして高額な契約へと誘うのか?
ひと昔前の悪質な訪問販売業者であれば、公的機関を騙ることに重きを置いていた。
「消防署の方から来ました」
「市役所から、水質調査に来ました」
そして、「点検します」を名目に家へ上がりこんで、しつように消火器や浄水器の販売をする。だが、こうした騙り商法では、後に家人に身元を調べられた場合、簡単に嘘が発覚してしまうことになる。それゆえに、最近は導入部分にもっと自然な文言を用いてくる。
ある業務停止命令を受けた業者は、次のような手を用いていた。
家を訪問する際、まず粗品を渡しながらこう言うのだ。
「近くで工事をしています。ご迷惑をおかけすると思いますが、よろしくお願いします」
「近所から音がうるさいと苦情が入ったので挨拶しています」
そして、「ついでに」という感じで尋ねる。
「ところで、何か、お住まいで、ご不便はありませんか?」
「もしよろしければ、無料で屋根や床下をみましょうか?」
そして、家人から点検の了解を得るや屋根に上がり、帰り際にこう嘘の不具合を説明する。
「釘がいくつもはずれていますね」
「このままだと、屋根の漆喰が落ちてしまいすよ」
不安になった家人から「大地震が来たら瓦は落ちますか」と尋ねられると、「落ちます」と断言する。そして、ここで高額なリフォーム契約に……とはならない。ここがポイントだ。