ワルは、守備のウラを取る「Theストライカー」
知能犯であるワルたちは、私たちの思惑を超えた巧妙な手を打ってくることがある。“クリエイティブ”と言ってもいいくらいに。
例えば、近頃、頻発するキャッシュカード詐取の手口。騙し取る方法のひとつに、デパートの店員などになりすます、というものがある。店員を装った人物が「ブランドバッグを買いましたか?」と、ある人物に電話をかける。身に覚えのない相手は、「買っていませんよ」と答える。
すると、店員に偽装した詐欺犯はちょっと驚いたようにこう畳かかける。
「あなた名義のカードが不正に使用されていますね」
まさか自分のカードが不正使用されているとは……と動揺する相手に、詐欺犯はやさしく語り掛ける。
「では、カードを停止して、回収する手続きを取りましょう」
すると、今度は「全国銀行協会」などをかたる人物が電話をかけてきて、本人確認という理由で、まず暗証番号を聞き出す。
次に、自宅に「協会職員」を名乗る人物がやってきて、受領証を渡しながらカードを騙し取るのだ。
百貨店店員(電話)→全国銀行協会(電話)→全国銀行協会(自宅訪問)という犯行プロセスで注目したいのは、それらが超短時間で行われているということだ。
最初の電話から30分もしないうちに詐欺犯らは自宅までやってくる。
特に高齢者の場合、矢継ぎ早に話されるため、クレジットカードからキャッシュカードに話が切り変わっても気付かずに、カードを渡してしまうこともある。
ワルは騙し取ったカードで、まんまとATMからお金を引き出すのである。
さらに巧妙な手口もある。
警察官を騙った男が、「あなたの銀行口座が犯罪に使われている」と言って家を訪問する。そして「今後の不正使用を防ぐため」と称して、自ら持ってきた封筒にキャッシュカードと通帳、暗証番号を記入させた紙を入れさせて封を閉じさせる。いかにも小ズルいのは、次の指示だ。
「ハンコを押して、保管してください」
そして家人が印鑑を取りに行くために、封筒から目を離すと、その隙を狙い、男は別に用意していた封筒と、本物の封筒をすり替える。家人はまさか相手が偽の警官と思っていないため、封筒が入れ替わっていることに気づかずに、被害にあってしまうのだ。