ワルが利活用している「マッピング」思考とは?

この封筒のすり替えでは、相手が注意をそらした隙に犯行が行われている。これは、ワルたちが使う常套手段だ。よくサッカーでも「ウラを取る」という言い方をするが、これに似ている。

ディフェンダーの動きを見て、攻撃側は相手の裏(死角)に入ることで、ゴールを狙いやすくなる。詐欺や悪質商法でも同様に、相手の見えない背後(隙)に回り込み、お金を取るというゴールを決めてしまう。先の手口でも「キャッシュカードが不正使用されている」という不安な話をしながら、ガードが甘くなったところを狙って、カードを搾取している。

ワルたちは、私たちが視線をそらした隙に悪さを行うが、ビジネスでは、こんなことをしたら、信用を失うことになるので、絶対にしてはいけない。逆に相手が見えないところでこそ、相手の利になるようなことを行ってこそ信頼を得られるだろう。

いずれにしても、ワルたちは相手のどこに隙があるのかを見極めて、そこを攻めるのが、実にうまい。その点からは学べるものがある。

仕事上の隙や漏れをなくす方法に、縦軸、横軸の座標を利用したマッピングが使われることがある。例えば、縦軸を満足度にして、上にいくほど高くなるようにし、横軸に本人が考える重要度をおき、右にいくほど高くなるようにする。

商品購入の顧客に再び電話をしたとする。このマッピングがあれば、その顧客がどこの位置づけにあるのかを考えて、話をすることができる。

顧客が、商品への満足度、重要性ともに強く感じている(座標の右上の第1象限=図表参照)ならば、特に強いプッシュをしなくても、軽く購入を促せば、すんなりと契約してくれるかもしれない。うちわで仰ぐ程度の話をすればよいにも関わらず、延々と長話をしてしまって、相手に鬱陶しがられてしまえば、せっかくの上客を逃すことにもなりかねない。

左上の第2象限は、満足度は感じているものの、重要性をさほど感じていない人である。この場合、本人の状況を聞き出すなどして、相手に合わせた商品価値を訴えかけてみる。

右下の第4象限は、重要度は高いが、満足度の低い人だ。この時は、似たような効能を持つ別な商品を紹介していけば、そのなかに満足度を感じる商品が出てくるかもしれない。左下の第3象限の重要度も満足度も感じていない人だとすれば、まったくジャンルの違う商品を紹介していく手が考えられる。こうした位置づけをすることにより、相手に合わせた的確な話ができる。

この他にも、縦軸に過去と未来、横軸に私的と公的をおけば、相手が未来志向型か、過去の実績にこだわる人物なのか。また、自分の利益を中心に考えるのか、それとも、社会性を重んじる人物なのか。相手がどの象限に入るのかを考えて、その性格に沿った話ができる。金融商品の説明でも、縦軸に「儲かる、損する」、横軸に「リスクを恐れる、恐れない」の高低といったものを入れてみれば、相手のツボにあった金融商品を紹介できるはずだ。