ワルは、常にゴールネットを揺らす執念に燃える
悪質業者と対していると、彼らは2軸を使ったマッピング思考に長けていることがよくわかる。たとえば、開運商法による被害が多発したが、この手口では、まず安い金額の開運グッズを買わせて、その効果を尋ねるための電話をする。もし先ほどのように、重要度も満足度も高い顧客であれば、どんどん値段を釣り上げた商品、サービスを紹介して契約させてくる。しかし、彼らにとって一番厄介なのは、満足度も重要性も感じていない第3象限の人である。さらなる商品の販売は無理なのか? いや、違う。彼らは諦めずに「効果がない」というウラをとって攻めてくるのだ。
「まったく、効果がない商品じゃないですか! 返品します!」と、強い口調で迫る客に悪質業者は、次のように語り掛ける。
「そうですか。でも、それはおかしいですね」
「えっ?」
「この商品を使って、これまでほとんどすべての人が、効果があると感じています。あなたのような人はとても珍しい。もしかして……」
「えっ、何ですか?」
「非常に、言いにくいのですけれども、あなたの因縁がかなり深すぎて、この程度の開運グッズでは効果がないということかもしれません。知り合いの霊能師を紹介しますので、みてもらってはいかがですか?」と提案して、後に高額な祈祷料をとるのである。まさに、「効果がない」というウラをとってくる。
ビジネスでも、ウラを取ることで大きな利益をもたらすことは多いはずだ。商品やサービスのクレームを受けた時、クレームの度合いが高くても、商品への愛着が高い客ならば、その不満を逆手にとって誠意ある対応すれば、相手が長年使用してくれるヘビーユーザーに変貌する可能性は極めて高いのではないか。
また普段から安いものを買い、節約志向の人を「お金に渋いから、ものを買わない」と思い込むのは間違いである。ケチ度が高く、貯金率が高い場合、ウラを返せば、お金を貯めて、家など何か高価な買い物をしようとしているためかもしれない。そこを突いてみる。2軸で相手の状況をマッピングし、ウラを取った営業をすることは、ゴールに執念を燃やし、相手の隙をついたりこぼれ球をねじ込んだりする執念のストライカーそのものなのである。