ワルの親玉ほど「言葉」に細心の注意を払う
今年6月に実際に起きた事件。財布を落とした女性がJR小倉駅に取りに行った時のことだ。
30代の男性職員が財布を返却してくる際、「お金が抜き取られています」と言った。財布には6万円が残っている。
「なぜ、お金が抜き取られているのが職員にわかるのか?」
不審に思った落とし主の女性が警察に通報し、男性職員は8万円を盗んだ業務上横領の疑いで福岡県警に逮捕されたという内容だった。「お金が抜き取られている」などという不用意な一言で、窃盗行為がばれてしまったわけだ。
このような間抜けケースは詐欺においても起こる。通常は話や手口が巧みでまったく尻尾を出さないワルなのに、突然、犯罪行為を露呈してしまうことがあるのだ。
私はこれまで数々の悪質商法の現場に潜入してきたが、勧誘元には、卓越した話術のベテラン勧誘員だけではなく、経験の浅い稚拙な勧誘員もいる。
稚拙な勧誘員が出てくるとたいてい支離滅裂な話になるので、かえって悪質業者の巧みな手口が読み取れないことも多い。それゆえ、リスキーだが、時にわざとその人物をやり込めて自分には手に負えない人物と思わせて、ワルの親玉ともいうべきベテラン勧誘員を引きずり出すこともある。