「いらない」と言ったことが逆にアダ?

断っているのだ。いらないと言っているのだ。それなのに、結局、金を払ってしまう人がいるーー。

年末年始はワルたちにとって書き入れどきである。注意が必要だ。例えば近年、多く発生している詐欺のひとつに「名義を貸してほしい」と頼み込んでくる手口がある。

名義を貸せとは……。怪しすぎる。にもかかわらず、引っかかるのはなぜなのか。ある事例の手口はこうだ。

「老人ホームへ入所する権利の名義を譲ってくれないか」

高齢女性はある業者から電話を受けた。女性はきっぱりと、「必要ありません」と断った。業者は「入居を待っている人がいるので、その権利を譲ってほしい」としつこく懇願したが、女性は「結構です」と一切応じずに電話を切った。

女性としては、しっかりと撃退したはずだった。

ところが数日後、別な男から電話がかかってくる。

「あなた名義で老人ホームの入所の権利の申し込みがなされました。これは、名義貸しという犯罪行為です! このままだと裁判になります」

などと畳みかけられて、トラブル解決の名目で、数百万円払ってしまっている。

なぜ、女性は騙されたのか?

理由の1つは、犯人側の一方的な主張で攻められたことにあるだろう。グルになった詐欺犯らは、女性に対して「あなたは老人ホームへの入居権は『いらない』と言いましたよね」と強く主張したらしい。

そのことで業者は「女性が権利を放棄した。その権利を譲り受けた」と勝手に判断。「あなたの名前で老人ホームの入居権の申し込みをした」と強弁するのだ。電話口で「犯罪行為だ」「裁判だ」といった高圧的な言葉を浴びせられた女性は冷静ではいられなくなったのだろうか、結局、丸め込まれてしまう。

誰がどう見ても、これは完全な言いがかりだ。こんな論法では、すべてがまかり通ってしまう。

例えば、店員が2つの服を勝手に出してきて、どちらがよいですか? と尋ねる。

客が「左の赤い服は買いません」と言うと、店員が「それでは、左の赤い服がいらないということは、右の服をご購入するということですね。お買い上げ、ありがとうございます」などと一方的に言って、服をレジで包み始めるようなものだ。「おいおい、誰も買うとはいっていないぞ」となるに違いない。