早くも300万円盗まれる被害例が!

サイバー攻撃によって日本年金機構のパソコンがウィルス感染し、125万件もの個人情報が流出した事件。被害の重大性は日に日に増している。最初のウィルス感染から17日間も、その事実を担当者が上司に報告せずに放置していた実態が明らかになるなど、個人情報を扱っていることに対する日本年金機構の意識の低さにはほとほと呆れてしまうが、もはや愚痴ばかり言ってはいられない状況だ。

今回の個人情報流出事件での問題点は、大きく2つある。

まず流出した件数の多さだ。1件分の内容は、「住所、生年月日、名前」に加え、「年金番号」がついているものもあるという。詐欺を行う輩にとって、これら4点セットは喉から手が出るほど欲しい情報である。

すでに詐欺師が保有している名簿に、年金番号がくっつくことで、より精度の高い名簿としてだましのツールに使われる危険がある。それに、高齢者のなかには、これまでの度重なる迷惑勧誘に耐え切れず、最近、新しい電話番号に変えたり、引っ越しをした人もいるかもしれない。今回の個人情報流出はそうした人々の身を守る努力を一瞬で、無にしたともいえる。

▼なぜ暗証番号を教えたのか?

今回の流出事件のもうひとつの問題点は、流出しなかった人への影響である。

詐欺犯らは、すでに手元に大量の個人情報を持っており、それをどのような詐欺で使おうかと考えている。そうした輩に、詐欺電話をかける格好の口実を与えてしまった。

すでに、この事件に便乗する形で、架空の団体名「国民年金機構」や同「消費生活相談センター」の職員や「弁護士」を名乗り、流出事件を受けた体裁の緊急アンケート・調査と称して、家族構成など、さらなる個人情報を聞き出す不審電話がかかってきている。

読売新聞6月2日朝刊1面より

ある高齢者は「個人情報が流出している。キャッシュカードのデータを消して元通りにするためにカードを預かる」という「国民年金機構」をかたるワルの話を信用してしまいました。「ニュースで言っていたあの流出事件のことか」と不安が高まったに違いありません。

電話口でキャッシュカードの暗証番号を伝えると、すぐに自宅を訪ねてきた弁護士の秘書を名乗る男に、そのカード4枚を手渡してしまいました。その後、口座から300万円が引き出されました(今回の個人情報流出問題で、日本年金機構は「加入者に電話で問い合わせることは絶対にない。また、キャッシュカードを預かったり暗証番号を聞き出したりすることもない」と言っている)。

そういえば、ベネッセホールディングスによる名簿流出直後にも、このニュースに便乗する形で「あなたの名簿が漏れています」という電話が全国各地の家庭にかかり、個人情報の削除費用を請求する被害も起きた。

しかしあの時は、子供を持つ親で、会社に資料請求や契約などの何かしらの関係を持っていた人が対象であり、それ以外の人たちはある意味、他人事で済んでいた。しかし、今回は、すべての年金加入者がこの不安にさらされており、その影響は極めて大きいといわざるをえない。