なぜ、ポジティブな評価をされていないか

9月に開かれた金融政策決定会合で、日本銀行は2013年4月に黒田東彦総裁が打ち出した「異次元緩和」と称される量的・質的金融緩和(QQE)から「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」への政策転換を決定した。これは何を意味するのか。ソニーフィナンシャルホールディングスの金融市場調査部長・尾河眞樹氏に話を聞いた。

金融政策決定会合後に記者会見する日本銀行の黒田東彦総裁。(時事通信フォト=写真)

「これまで日銀が行ってきた『量的・質的緩和』とは、市場に大量にお金を供給することで、企業や家計のインフレ期待を上昇させ、実質金利の低下によるデフレからの脱却を狙ったものでした。長期国債を年間50兆円買い入れることを柱とし、紙幣・貨幣の発行高と日銀当座預金(銀行が日銀に預ける預金。預金残高に対して一定率の金額を預けることが義務付けられている)の合計であるマネタリーベースを年間60兆~70兆円増加させて2年で2倍にし、同期間で消費者物価上昇率の前年比を2%にすることが当初の目標。その後、ETF(上場投資信託)を通じた株式購入増額、長期国債買い入れ額の80兆円への拡大、一定額を超える日銀当座預金に対する利率をマイナスにする『マイナス金利』の導入などで緩和を強化してきましたが、物価上昇率は目標に届いていません。

しかし、私はこれまでの政策が間違っていたとは思いません。むしろ、世界的な逆風が強く、やれることが少ないなかで『日銀はよくやった』とさえ思っています。さらに今回の政策転換は、市場の不安を払拭するウルトラC的な手法だと思います」