10人に1人が選抜「タレントマネジメント」
大手企業を中心に優秀社員を特別の出世コースに乗せて活躍を促す欧米流の「タレントマネジメント」と呼ぶ仕組みが流行っている。
社員の個々の能力を見極めて少数の社員を早期に選び出し、研修プログラムの受講や適性に応じた職務・役割への異動・配置を行って鍛え上げ、将来の経営リーダーに育て上げる取り組みだ。
社員の誰をにするかは個々の企業によって異なるが、多くの企業が取り組んでいるのが優秀なリーダー層のタレントマネジメントである。欧米企業では、リーダーにふさわしい人材を見極めて特定し、その人たちに対する人的投資もちゃんと行う。
その代表格は日産自動車の仕組みだろう。
カルロス・ゴーンCEOの号令で始まった「日本人の経営リーダーを育成する特別のプログラム」だ。
20代の若手社員を対象に入社3~5年目から始まる。優秀な社員を選抜し、海外事業所に4カ月派遣し、実務を経験させる。帰国後は本格的な2年間の海外派遣と2年間の他部門勤務の計4年間のローテーションプログラムを経験する。
派遣といっても単なる研修ではない。将来のリーダー候補として、ワンランク上のポジションに就いて仕事をする。
たとえば日本で営業をやっていた人であれば、アメリカ法人では一つ上のポストに就いて営業を2年間やり、日本に戻ったら今度は他部門で同じように2年間経験する。全部で4年超だからプログラムが終了するのは20代後半から30歳ぐらいになる。
この間のパフォーマンスは常にチェックされる。ローテーション異動は2013年に始動し、15年にフルスタートを切ったばかりだが、現在、選抜人材の6割が海外に赴任している。20代の若さで実践的な経営の修羅場を経験するが、もちろん選ばれるのは全員ではない。このコースの対象者はトータルで100人程度という。
日産自動車の総合職の年間採用数は350人だから、入社3年から5年目の社員は3年間で約1000人。選抜されるのは1割という狭き門だ。