オバマ氏広島訪問、日韓・日露の関係改善……次々実現する秘密とは?
7月10日の参議院選挙の結果、改憲勢力が国会の3分の2を占めることになった。間接民主制、議会制民主主義の選挙とは人を選ぶものだから、本質的なところは、候補者という「人」を信用するかどうかなんだよね。その「人」を選んだ以上、その「人」たちの議論の結果に委ねるというもの。だからこそ、選ばれた「人」と有権者の思いにずれが生じることが当然にあって、そのずれを正すために、国民投票や住民投票というものが重要になるんだ。国民投票は、議会制民主主義にとって必要不可欠な制度。
日本国憲法の施行から約70年経って初めての憲法改正。やっとこういう時代になった。これまで憲法改正は一部の人たちで強く主張されていたけど、国民的には理解を得られなかった。憲法改正は政治の中の政治で、当然、そのときの国の状況に左右される。今になって憲法改正を議論できる国になったということだね。
ほんと、安倍晋三首相・菅義偉官房長官の政治は凄すぎる。政治っていうのは流れをつくっていくことで、それが政治家の手腕、力量。そして民主政治というのは、どれだけ自称インテリがポピュリズムと批判しようが、国民から支持を受けなければ、政治はできない。かといって、国民が嫌がることを放置し、やるべきことをやらなければ、これまた支持が減る。国民から支持を受けるっていうのは、ほんと大変なんだ。
学者や自称インテリは、自分が興味を持っている範囲のことだけで、あーだこーだと言ってくる。でも権力の運営はありとあらゆる課題に対処しながら、国民の支持を得て、そして自分の考えを実現するという綱渡りのようなもの。
たとえば昨年、安倍首相が出した歴史認識の戦後70年談話。ある学者は、こんな謝罪をするような歴史認識はダメだ! だから安倍首相にはおさらばだ! なんて偉そうに言ってたね。安倍さんは、あの談話は不本意だったはず。もともと中国・韓国に対しての謝罪の意を入れるつもりはなかったはず。逆に、僕は為政者は謝罪の意を持ち続けるべきという立場。まあ僕は無責任に言えばいいだけだから楽なもの。でも政権運営では韓国や中国との関係にも配慮せざるをえない。だから安倍談話のようになるのはある意味仕方がない。
それから5月のオバマ氏の広島訪問。僕は無責任な立場だから、オバマ氏に謝罪を求めよ!! なんて言えるけど、現実アメリカとの外交関係等を考えれば安倍さんがオバマ氏に謝罪など求めることなどできない。現・民進党の前原誠司さんが外務大臣のときに、北方領土問題についてロシアが不法占拠している!! とそのまま言ったら、ロシアが猛反発した。安倍さんは、ロシアが不法占拠しているとは一言も言わない。歴史認識やオバマ氏の広島訪問、北方領土問題に至るまで、その分野分野においていろいろな批判が出るけど、その批判は全体的な整合性が取れているわけではない。権力の運営は、口だけでは意味がなく、実行してなんぼ。そして現実の様々な課題、利害関係、人的な信頼関係との調整が必要になる。
安倍さんの政権運営によって、現実、日米韓の外交関係が強まった。あれだけ消極的だった米韓ミサイル防衛システムへの参加にも韓国は動き始めた。世界から孤立しているロシアとも、日本は繋がっており、年内にはプーチン大統領が日本に来るとの話も。これが現実の権力運営だよね。
※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.14のダイジェスト版です。