恩義など感じず、どんどん改革を進めてほしい!

今回の東京都知事選挙では、傘下に都職員の組合を抱えている日本労働組合総連合会(連合)は、圧勝が見込まれる小池百合子さんとケンカはしなかった。連合は、民進党や共産党が推す鳥越俊太郎さんの応援から外れた。連合としては素晴らしい政治判断だけど、小池さんはどう出るか? 連合が鳥越さんの応援をしなかったことで、小池さんは連合、都職員組合に恩義を感じているか。都職員組合はハラハラものだね。

僕は小池さんには、恩義なんて感じないで欲しい。東京大改革をやるなら、これからは都庁組織、役人組織に大胆にメスを入れなければならない。ある意味、職員とケンカをする場面もあるだろう。だからこそ、職員を敵視する必要はないが、恩義を感じる必要もない。ズバッと都庁組織の改革を進めてほしいね。

都職員組合、連合だって、虫が良すぎる。どうせ負けることが分かっていた鳥越さんの応援をしなかっただけ。小池さんの応援をしたわけではない。この辺が役人判断なんだよね。戦のときに、中立というものほど、しょうもないポジションはないよ。どちらに付くかはっきりしないと。

勝った側に付けば、当然論功行賞をもらえる。負けた側に付けば、何らかの制裁が加えられるけど、それでもあいつははっきりしていると評価される。次のチャンスに復活できれば信頼度合いが高まることは間違いない。もちろんチャンスがなくそのまま終了となることもあるけど。

一番ダメなのは、どっちつかずの中立、様子見だよ。これはスイスの永世中立は別だよ。スイスは中立と言っても、どっちつかずではなくて、あらゆる相手と同等に「戦う」というものだから。第二次世界大戦のときも、自分の領空を侵犯する航空機は、連合国のものであろうが枢軸国のものであろうが撃ち落とすという宣言をしていたからね。このようなスイスの中立ではなくて、逃げの中立が一番ダメ。

都職員労働組合が小池さん応援にまで踏み切っていたら、それなりの論功行賞をもらえたのかもしれないけど、今回は逃げの中立。小池さんは、都職員労働組合に、選挙の恩義など感じず、大胆に改革をして欲しいね。

役所組織自体は、政治に中立でなければならない。逃げの中立でいい。役所組織は市民の税金で運営されており、市民には色々な政治思想の持ち主がいるから。だけれども公務員労働組合、厳密には現業職の労働組合は一定の政治活動が認められている。そして問題は行政職の公務員。行政職の公務員は地方公務員法上、政治的中立性が求められるが、政治的中立性の中身の規定もなく罰則規定もなかった。だから行政職の公務員も事実上の政治活動を行っている例が多い。かつての大阪市役所がそうだった。

そこで僕は、大阪市の行政職の地方公務員にも、国家公務員と同じような政治的中立性を求め、反する場合には懲戒処分にもできるような条例を制定した。全国初の条例だ。

これ以後、大阪市の行政職の公務員が、組織的に政治活動を行うことはなくなった。もちろん職員個人の政治活動は認めているが、それでも公務員労働組合に頼りっきりだった旧民主党の政治家は大阪では皆落選した。大阪府議会では一人、大阪市議会ではゼロ。堺市議会では民進党が設立される前に、そもそも「民主党」という看板がなくなった。国会議員も旧民主党の小選挙区勝者は一人。参議院議員はゼロになった。

公務員の政治活動に対する規制については賛否両論があることは承知している。しかし日本の公務員の政治活動には非常に問題が多い。特に大阪市ではそうだった。一般の有権者は、当該地域の未来を考えて一票を投じるが、公務員、特に当該役所の職員は、自分の“社長”を選ぶ一票である。ここが一般の有権者の一票とは異なるところだ。地域のトップを選ぶ一票というよりも、自分の属する組織のトップを選ぶ一票となる。すなわち地域の未来を考えるよりも、自らの職場での処遇待遇を考えての一票となってしまう。一般社会において、従業員が社長を選ぶ権利など持ち合わせていない。

さらに、役所から補助金支出先への働きかけや、組合事務所の特別な優遇という問題もある。これら、解決しなければならない課題を解決した上で、公務員の政治活動規制をなくす議論に移るべきだ。

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.19のダイジェスト版です。

(撮影=市来朋久)
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