もし次年度予算に持ち越したら大阪の改革は進まなかった
小池百合子東京都知事は8月末に「築地移転延期」を表明した。これについて僕は「そんなことよりも直近の平成29年度予算編成に全精力を注ぐべきだ」と散々訴えてきた。
そんな中、小池知事は9月10日緊急会見を開いた。都が盛土をしていると説明していたところに盛土がなかったらしい。これは小池知事が言うように都の説明としては問題があるであろう。この点を明らかにしたのは小池知事の功績だ。しかし安全性についての判断は冷静にならなければならない。
一部盛土がなくても、その部分に50センチ以上の土壌入れ替えや、10センチ以上のコンクリートによる覆土があれば安全対策上は問題ない。何よりも空間計測における客観的なデータとして基準値以上の汚染物質の検出はなされていない。汚染の中核であるベンゼンについては、排ガスの影響によって築地の方が豊洲よりも数値が高いことも認識しておかなければならない。
この一部盛土がなかったことを8月末の移転延期判断までに小池知事が把握していたら、当然移転延期記者会見で公表し、移転延期の理由の柱としていただろう。ところが9月10日になって緊急に記者会見を開いたということは、移転延期の決定後に一部盛土がない事実を知り、移転延期の判断の正当化に活用したのであろう。この会見の際、都の言い分については全く触れられていなかった。ここが非常に気になる。都庁はこう言っているが、この点がこういう理由でおかしい、とまで言えることが今後の見通しが立っている証となる。
あれだけの規模の建物なら、地下に配管のために空間を作っておくことは建築上当然のことだ。ちょっとしたビルが土の上に直接建つことなどない。盛土ができない代わりに、50センチ以上の土壌入れ替えや、10センチ以上のコンクリートによる覆土によって安全対策を講じるというのは極めて合理的な判断だ。もしそのような対策を認めず、現在の建物地下空間4.5メートル部分にも盛土をした上で地下空間4.5メートルを作ろうとすると豊洲全体に9メートルの盛土をしなければならない。想像を絶する過剰な盛土対策となる。土壌汚染対策は、盛土だけではなく、土壌入れ替えやコンクリートによる覆土などの方法もあることを認識しておかなければならない。
もし一部盛土がないところで、他の対策を全く講じていないのであれば、これは移転白紙撤回にも迫る事態だ。しかしそれらがなされていれば、説明方法や手続きの問題があるにせよ、移転が白紙に戻ることはない。
報道によると一部盛土がない地下空間は、厚さ35センチから45センチのコンクリートで覆土されているとのことだ。「厚さ10センチ」が土壌汚染対策法上求められている基準であることからすると、十分過ぎるほどの対策だ。さらに同法が求める対策をはるかに超える汚染物質の除去という過剰対策までやっている。
説明の不備や手続きの不備があったことは間違いない。しかし盛土以外の対策を講じ、客観的なデータとして基準値以上の汚染物質が出ていないということは安全対策がうまくいっていると考えるのが合理的ではないか。水質モニタリングは過剰調査の類であり、だからこそこれは法的義務になっていない。説明不備や手続き不備と安全性の問題は区分けして考えなければならない。
最終的には専門家会議の承認が必要となるにせよ、これらの事実確認や最終的な見通しは、都の職員とのコミュニケーションや外部顧問からの助言で十分できるはずだ。