豊洲新市場の地下水から環境基準を上回るヒ素とベンゼンが検出された。小池百合子東京都知事は市場問題プロジェクトチームを立ち上げ、過去の意思決定の経緯や豊洲の安全性について徹底究明する構え。ますますヒートアップする豊洲問題だが、落としどころはあるのか。大阪府知事、大阪市長を経験した橋下氏が直言する。

「感性」ではなく「論理」で考えることが問題解決のカギ

僕がツイッターで、「豊洲の地下水は飲むわけじゃない」と書いたら、小池さんに記者会見で「それは感性の違いだ」と反論された。

確かに安全基準をどのレベルに設定するかはトップの判断だ。しかし、専門家会議の議論の流れをしっかり頭に入れておきさえすれば、地下水対策として設定された環境基準や排出基準は、地下水を飲んだり利用したりするために設定されたものでないことは一目瞭然。これは感性の問題ではなく、ロジック、論理の問題だ。

豊洲新市場の空撮

環境基準と聞くと、それが絶対の基準のように感じてしまう。そこが豊洲問題の元凶。環境基準とは飲み水基準だが、豊洲で設定された環境基準は、地下水を飲むために設定されたものではない、ということを理解することが豊洲問題を解決するキーポイントだ。

豊洲の地下水になぜ環境基準や排出基準が設定されたのか。その論理を理解しなければならない。それは食の安全・安心の大義の下で、「感性」によって設定されたというわけでは決してない。あくまで論理によって設定されたのだ。

1、市場建物下の地下水については、揮発性のベンゼン・シアン化合物が気化して市場建物内に侵入してくるリスクを回避するための、かなり余裕のある目標としての「環境基準」。

2、市場建物下以外は、地下水を下水として扱い「排出基準」を目標とする。そして地下水管理システムを稼働しながら将来は一般的な環境保全として「環境基準=飲み水基準」を目指す。

この論理の柱が頭に入っていれば、環境基準を少し上回ったベンゼンが出てきた!ヒ素が出てきた!となっても何も慌てることはなく、きちんと説明できる。

まず、ベンゼンが出てきたのもヒ素が出てきたのも、市場建物下「以外」の地下水だ。市場建物下以外は、専門家会議はもともと「排出基準」を目標としていた。下水扱いでいい、と。

それは環境基準の10倍。つまり両物質とも1リットルあたり0.1mg。そして今回検出されたのは、ベンゼンが同0.011mgと同0.014mg。そしてヒ素が同0.019mg。余裕で排出基準以下である。

そもそも豊洲の地下水は飲み水ではないので下水基準でいいじゃないか。 建物下以外においても専門家会議は将来は環境基準を目指したが、それは地下水管理システムを稼働しながらのこと。

そして専門家会議の提言を受けて、技術会議は、建物下だけではなく建物下以外でもさらに安全レベルを上げて環境基準を目標とした。それは専門家会議が将来の目標としたことを、技術の総力をあげて前倒ししようとチャレンジしただけである。技術会議が建物下以外に設定した環境基準は絶対的な基準ではなくチャレンジ目標。ゆえに、建物下以外の地下水からベンゼンやヒ素が環境基準を上回って検出されたとしても何の問題もない。そもそも豊洲の建物下以外の地下水は下水扱いで十分であり、下水基準すなわち排出基準を下回っていれば何も問題はない。今回環境基準値をオーバーしたと大騒ぎしているが、排出基準は現段階で余裕で下回っている。現段階で排出基準を仮にオーバーしたとしても地下水管理システムが稼働すれば排出基準を下回るまで浄化するし、将来環境基準が達成されることを目指す。