▼会話編
咄嗟の対応が求められる会話や電話では、つい使い慣れている言葉や言い回しを使ってしまいます。正しい用法を身につけ、周囲の模範となることができれば社内評価も上がるかもしれません。
[二重敬語]
一つの言葉を重ねて敬語化する二重敬語。敬語を重ねたからといって敬意が高まるわけではないので避けましょう。
× ご覧になられますか
○ ご覧になりますか/見られますか
解説:「ご(お)~になる」+「られる」パターンの誤用。尊敬語は一つの言葉に一つまでが鉄則です。
× お承りいたしました
○ 承りました/承知いたしました
解説:「お」+「謙譲語」+「謙譲語」の三重敬語。まどろっこしく、慇懃無礼な印象を持たれます。
[バイト敬語]
コンビニや飲食店でよく耳にするバイト敬語。通用するのは学生時代まで。仕事に慣れていない印象を持たれます。
× こちらでよろしかったでしょうか
○ こちらでよろしいですか/こちらで問題ございませんか
解説:バイト敬語の代表格。「よろしかったでしょうか」では尊重する先が自分になってしまうため、相手を尊重する「よろしいですか」にしたほうがいい。
× とんでもございません
○ とんでもないことです/とんでもないことでございます
解説:よく耳にする言葉ですが、「とんでもない」で一つの単語なので読尾を変化させるのは誤用。
[ウチ・ソト逆転敬語]
社内の人間(身内)に尊敬語を、社外の人に謙譲語を使ってしまう間違いです。
× (他社の人に)弊社営業部の田中さん/田中部長です
○ 弊社営業部部長の田中です/弊社営業部の部長です(近くに本人がいて心理的に呼び捨てにしづらい場合)
解説:身内に「さん」をつけるのはもってのほか。役職を表す言葉自体が敬意を表現するため、語順を変える等の工夫が必要です。
× 弊社の担当にお伝えします
○ 弊社の担当に申し伝えます
解説:敬意を払う対象が身内になっています。これでは、自社の人間を高めることに。
[上から敬語]
一見、丁寧な言葉ですが、かえって相手を下げてしまう言い回しがあります。敬意の対象は常に考えておきましょう。
× 申し訳ございません、わが社の責任です
○ 申し訳ございません、弊社の責任です
解説:「わが社」は間違いではありませんが、得意先には謙遜した言い方をするほうがベター。特に、謝罪のときは偉そうな印象が出て不自然。
× (はじめのあいさつで)お世話さまです
○ お世話になっております
解説:「お世話さま」はねぎらいや感謝を意味しているが、はじめてのあいさつでは使わない。2回目以降であれば、相手との関係性によってはOKの場合も。
[電話敬語]
顔が見えないからこそ、正しく使いたい電話での敬語。特に、へりくだる表現と敬意を表す表現を混同しないように注意。
× (電話を受けて)伊藤様でございますね
○ 伊藤様でいらっしゃいますね
解説:「営業部の後藤でございますね。少々お待ちください」のように、「ございます」は身内の名前を確認する際に使います。
× お名前ちょうだいできますか?
○ お名前をお聞かせくださいますか?/お名前をお教えくださいますか?
解説:名前は聞くものであって、ものとしていただくものではありません。名刺交換文化から派生した誤用です。
[ムダ敬語]
敬語に慣れていない人ほど、文法的に誤っている余分な言葉を加える傾向があります。すっきりとした言い回しを心がけましょう。
○ 今日は休ませていただきます/今日はお休みをいただきます
解説:一見丁寧に見えますが、五段活用の動詞は「せる」と結びつくのが原則。「休ませる」という相手の動作を考えれば、「さ」は余計なことがわかるでしょう。
× (社外からの電話で)本日、佐藤はお休みをいただいております
○ 本日、佐藤は休みを取っております
解説:お休みは社外の人からもらうものではないので、不適切な表現です。「頂戴しております」も使われることが多いのですが、同じくNG。