明らかに病院側のミスであっても絶対に認めず、正当性を主張する医者もいる。手術や治療に入る前に、自己防衛の準備をしておこう。医師でジャーナリストの富家孝氏が解説する――。

「大学教授だから腕がいい」は、根拠なし

多くの医者は偏差値エリート意識が高いため、「自分たちに間違いはない」と思いがち。医療事故が起こった際には、つじつま合わせをする傾向にあります。明らかに病院(医者)側のミスであっても絶対に認めず、正当性を主張する医者も。その心ない仕打ちが被害者側を何度も傷つけていると、彼らは決して気づくことはありません。私の息子も医療過誤の被害者。データ取得のためか、常識はずれの不要な検査により引き起こされた被害です。その経験もあり、世間と医者の常識のズレを痛感しているのです。

大学病院や大学教授の肩書を持つ医者なら問題ないというわけではありません。日本人は個々の医者の実力よりも「肩書とブランド」に信用を置く傾向がありますが、とくに手術が伴う治療では、大学病院だから、一流医大の教授だからと「安心」してはいけない。「手術を」と告げられたなら、最低3人以上の専門医の意見を仰ぎ、やらなくてもいいという医者が1人でもいたら、手術はやめたほうが賢明。大学教授だから見立てがいい、腕がいいという根拠はありません。むしろ、年に数回しか執刀しない大学教授では、医療死亡事故を起こす確率も高い。たとえ新設医大出身でも、年数百例もの外科手術を成功させている医者のほうが安心して任せられる「名医」であるのは間違いない。ただし、名医にも「旬」があります。経験豊富でも年齢とともに腕が鈍ったり、判断力が低下したりすれば、第一線に立てなくなるのは当たり前です。

危ない病院や医者に遭遇しないための第一歩は、肩書や大学名などのブランド信仰を捨て、「医者に失礼だから」と、言いなりの患者であることをやめること。常に目を光らせ、医者を育てるような「賢い患者」になることにあります。