(6)景観や防災面の配慮
再エネの普及に伴い、日本各地で適格とは言い難い再エネ発電設備の設置が目立ってきた。特に景観や防災面での悪影響が顕在化している。先の関東・東北豪雨では、茨城県常総市の鬼怒川護岸を掘削して太陽光パネルを設置したことが被害拡大を招いたとの指摘もあった。また、太陽光パネルが生活道路のすぐ脇に設置されたり、周辺の景観を損ねたりしている事例も問題になりつつある。
FITには地元住民に対し、情報開示や安全性・立地適否について理解を得ることに関するルールはない。これは、先の関東・東北豪雨などで顕在化したルールの欠陥の1つだ。
経産省は、改善命令の手続きを新設し、FIT認定後も事業者を継続的に監督し、命令に従わなければ認定を取り消す方針だが、ぜひともこの方向で制度改正されたい。
さらに、地方自治体ごとに再エネ設備の設置に関する「環境アセスメントの制度化」が相次いでいる。今後こうした動きは加速しそうだ。例えば静岡県富士宮市、長野県佐久市、大分県由布市では、一定規模以上の再エネ発電設備を設置する際、条例に基づく届け出の義務付けを始めた。
環境アセスメントが強化されれば、再エネの導入コストは上昇を免れえない。しかし、再エネといえども環境との調和および地元自治体や住民の理解は必須であり、再エネ振興にとって、環境関連規制の強化はむしろ必要なこととも思われる。今回の再エネ買い取り法改正では、コスト低減もさることながら、「再エネ向け環境アセスメント」を適切な形で法制化していく必要があろう。
(大橋昭一=図版作成)