失速・中国の内需拡大阻む付加価値税17%

ここにきて、2017年4月からの10%への消費税増税の先送りへの動きが活発化している。官邸主導でノーベル経済学賞の権威を国際金融経済分析会合に招致し、増税見送りの「お墨付き」を得るなど、コンセンサスづくりに余念がない。増税見送りどころか欠陥制度である消費税制度そのものに反対している筆者としてはまことに喜ばしい状況であり、これを機に消費税率引き下げまで視野に入れた、消費税制度そのものに踏み込んだ議論に発展してくれればと考えている。

ノーベル経済学賞受賞者たちから、消費税増税先送りの“お墨付き”をいただいた?(共同通信フォト=写真)

増税実施に向けて、これまで最強官庁とされてきた財務省の動きはここにきて鈍い。官邸が各省幹部の人事権を掌握しているため増税への働きかけは弱くならざるをえないとする声もあるし、その一方でそれはあくまでも表向きとする声もある。実のところは、財務省自身は官邸に最大限配慮しつつ、予定通りの消費税増税に向け粛々と事務作業を行い、外堀を埋めている――というものだ。

実際のところは確認不能ではあるが、財務省のトーンダウンの背景には、主に国内要因と国際課税の最新の潮流を受けてという2つの理由が考えられよう。

まずは国内要因について。そもそも今回の消費税増税は8%が想定内で、よほど景気が過熱するような事態になった場合に、あわよくば10%とのシナリオを当初から描いていたのではなかろうか。というのも、内需大国である日本経済にとって消費税増税が実体経済に甚大な影響を及ぼすことを、天下の財務省が把握していないはずはない。

過去3年間(12年10~12月期から15年10~12月期まで)の実質GDPは13四半期中6四半期でマイナス成長を記録するという惨憺たる有り様だ。そのうち民間消費は308.5兆円から304.4兆円へとマイナス1.3%、住宅投資は13.8兆円から13.4兆円へとマイナス2.8%落ち込んでいる。少子高齢化による人手不足から労働需給は逼迫しているものの、1人当たりの賃金は非正規雇用の増加で伸び悩んでいる。

結果、この3年の名目賃金の伸びはわずか0.5%に留まり、増税による物価増もあり、実質賃金はマイナス4.4%にまで低迷。家計部門の所得減による需要の低迷、消費減退は民間消費が6割を占めるわが国のGDPにダイレクトに響く。