岸田文雄政権の目玉政策「資産所得倍増」は、どう評価すればいいのか。経済アナリストの森永康平さんは、「岸田政権が投資における非課税制度の改革を打ち出したことは評価すべきだろう。しかし、いまの家計には投資に回す余力がない。政策の順番が間違っている」という――。
女性は財政上の問題を抱えている
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「資産所得倍増」は今やるべき政策なのか

今月22日に公示予定の参院選に向けて、各党の動きが慌ただしくなっている。筆者も都内をランニングしていると、街頭演説に出くわす機会が増えた。選挙カーとすれ違うことも多い。

参院選を前に、政府は5月末に「骨太方針」案と「新しい資本主義」実行計画案を発表した。報道では「資産所得倍増計画」と「一億総株主」という言葉が繰り返し報じられているが、どうも政府は実行すべき政策の順番を誤っているように感じてしまう。本稿ではその理由について述べていこう。

「新しい資本主義」の目玉は「NISAとiDeCoの改革」か

政府が先月末に発表した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画(案)」のなかに以下のような記載がある。

「個人金融資産を全世代的に貯蓄から投資にシフトさせるべく、NISA(少額投資非課税制度)の抜本的な改革を検討する。また、現預金の過半を保有している高齢者に向けて、就業機会確保の努力義務が70歳まで伸びていることに留意し、iDeCo(個人型確定拠出年金)制度の改革やその子供世代が資産形成を行いやすい環境整備等について検討する。これらも含めて、新しい資本主義実現会議に検討の場を設け、本年末に総合的な「資産所得倍増プラン」を策定する。」(出所:内閣官房「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画(案)」)

現時点では、具体的な改革内容については上記の内容から推測することしかできないが、おそらく以下のような改革を考えているのであろう。

①NISAは年120万円の枠内で買い付けた株式などの取引を通じて生じた利益が5年間非課税になるという制度だが、この上限枠を現行から引き上げる。

②iDeCoにおいては今年の5月に加入可能年齢を60歳未満から65歳未満に広げたばかりだが、企業に就業機会確保の努力義務がある70歳まで加入可能年齢を引き上げる。

SNS上では本件について否定的な意見も多く見られるが、筆者はこの改革案自体を否定する気はない。しかし、政府はこれらの改革を行う前にやらなければいけないことがあることを忘れてはならない。