保育費・教育費・医療費を、全額無償化するなら
今年2月、認可保育所の申し込みを断られた母親が匿名ブログに書き込んだ「保育園落ちた日本死ね!!!」という言葉は、多くのメディアに取り上げられ、保育サービスの不足が広く認知されるきっかけとなった。同月のTOKYO MXのニュース番組の中では、コメンテーターのマツコ・デラックスが「子どもにかかるお金は国が責任を持つ制度が必要ではないか」と述べ、こちらもネット上で話題となっている。
現在の日本の大きな問題は、目先を見れば経済の停滞であり、長期で見れば未曽有の少子高齢化の進行だ。経済の停滞が弱者である若者世代にしわ寄せされ、低収入と安定しない地位が結婚・出産をためらわせている。それによる急速な少子高齢化が世代構成のゆがみと人口の減少をもたらし、経済と財政にマイナスの影響を及ぼす悪循環に陥っている。
この悪循環から抜け出すためには、子育てにかかる負担を政策的に軽減し、若い世代が安心して出産できる環境、幼い子どもを育てる親たちが無理なく働き続けられる環境を用意する必要がある。それなしに、日本という国の未来はない。
だからもし、先のマツコ発言通りに子どもの保育費・教育費・医療費を全額無償化するなら、どれくらいの規模の財政負担が必要となるのか、試算する価値は十分にあろう。
内閣府「インターネットによる子育て費用に関する調査」(2009年度)によれば、両親ともに非正規雇用の世帯における0歳から5歳までの保育費は、平均で年間約34万円。0歳から中学卒業までにかかる医療費は、合計で約28万円である。
文部科学省「子どもの学習費用調査」(14年度)によれば、小学校から中学卒業までに家計が負担する教育費は、塾代・習い事代を除き、公立相当で約112万円。以上から、中学卒業までの子どもの保育費と教育費・医療費は、1人当たり計約345万円となる。