「子どもにかかる教育費は1人1000万円以上」という脅し文句は本当か?
4月から消費税率がアップするため、家計の見直しをしようという機運が高まっている。しかし、家計の中で聖域化しやすいのが子どもの教育費だ。ここに切り込むために、どんなところに教育費がかかっているのかを分析して、冷静に検討してみたい。
一般的には「子どもにかかる教育費は、1人1000万円以上」というのが定説になっている。教育費の記事では脅し文句といってもいい。しかし、文部科学省の「平成24年度 子供の学習費調査」と日本学生支援機構の「平成24年度 学生生活調査」によると、幼稚園から大学まで全部公立で769万円、全部私立なら2205万円かかる計算になるので、あながちウソというわけでもない。
では、「1人1000万円以上の貯蓄がないと子どもを大学まで行かせられないのか?」というと、答えは「NO」。教育費は1回で1000万円払うものではなく、20数年かけて払っていくものだからだ。毎月の家計費の中から払う授業料、給食費やお稽古事の費用などを20数年積み上げていった額がこのくらいになるという試算にすぎない。
もちろん、私立より公立のほうが授業料が安い。
幼稚園から高校まで288万円なら、何とかなるか?
どうすれば、この積み上げた教育費の額が小さくなるのかを考えてみよう。もちろん、私立よりは公立のほうがかかるお金は少ないから、基本的には公立の学校を選んだほうが教育費は減らせる。
幼稚園は私立の学校数が62.2%と公立より多く、8割以上の子どもが私立の幼稚園に通うため、ここは私立でも仕方がないだろう。(文部科学省「平成24年度 学校基本調査報告書」より)。しかし、小学校、中学校は公立が圧倒的に多く、あまり教育費をかけずに義務教育が受けられる(小学校のうち私立の学校数は全体の1%、同じく中学校は7.2%しかない)。高校も都市部以外の地域では、公立が多いはずだ(高校のうち私立の学校数は27.1%)。
幼稚園だけ私立、あとは高校まで公立に通う場合をモデルケースとして、かかる教育費を考えてみよう。私立幼稚園に通う場合、学校教育費と学校給食費の合計は年間36.7万円。月に3万円程度の教育費がかかる(自治体が幼稚園就園奨励費補助金を出している場合も)。公立小学校に通う場合は、年間9.7万円。月額8000円程度、公立中学校は、年間16.8万円で月額1万4000円程度。さらに平成22年度から公立高等学校授業料無償制が導入され(2014年4月以降入学の生徒に関しては、所得制限あり)、公立高校の場合は、学校教育費は年間23.1万円と月額1万9000円程度ですむ(図表参照)。
ここまでの計算をしてみよう。このモデルケースでそれぞれの通学年数をかけると、幼稚園から高校までの15年間で合計288万円(学校教育費と学校給食費の合計額)。意外と何とかなりそうな額なのではないだろうか。