民間常勤保育士の平均年収は323万円
しかし50万人では、全潜在待機児童の6割以下にすぎない。しかも加速化プランに沿って定員を増加させるためには、保育士約9万人を増員しなければならず、現時点でその確保のメドは立っていない。さらに、すべての潜在的待機児童をなくすためには、12年時点で20万人だった民間認可保育所の常勤保育士を、2.5倍となる約50万人まで増やさねばならない。
厚労省は、保育士資格を持っているのに保育の仕事をしていない、いわゆる潜在保育士の数が、全国で60万人を超えると推測している。同省の調査によれば、資格があるのに保育士の仕事を希望しない理由として、「賃金が希望に合わない」が最多で48%。「賃金の低さ」こそが、保育士確保の最大の障害なのだ。
15年時点で、全産業の民間常勤労働者の平均年収489万円に対し、民間認可保育所の常勤保育士の年収は323万円(認可/認可外で同額と仮定)に留まり、両者の年収差は166万円、51%にも達する。この差を解消しない限り、民間保育士50万人の確保は困難とみられる。
保育士50万人の年収323万円を全産業平均並みに引き上げるには50万人×166万円=8300億円の公的補助が必要だ。さらに、潜在的待機児童の解消のために保育定員を十分に増やすには、約7000億円の追加予算が必要。合計は約1兆5300億円となる。
多くの人々が将来の費用の心配から出産を断念している中で、マツコの提案した「保育教育無償化」は、少子化を懸念する幅広い世代から支持される可能性がある。財源の確保が可能となれば、なおのことだ。
日本社会の未来のためにも、まずは保育士の待遇改善による潜在的待機児童の解消といった「小さな一歩」から始めてみてはどうだろうか。
(構成=久保田正志 図版作成=大橋昭一)