現実に必要な子育て費用は、これだけでは済まない。多くの人々は、わが子について中学卒業でよしとは思っていないからだ。仮に大学卒業まで親が面倒を見るとしたら、家庭が負担する教育費は格段に高くなる。
文科省の同調査によれば、高校の教育費は公立で年間約24万円。大学の教育費は、日本学生支援機構「学生生活調査」(12年度)によれば、通学費・課外活動費等を除いて、国公立平均で年間約53万円である。
以上で算出した、子育て費用の全面無償化を行った場合の財政への負担を、直近の年齢別人口データを基に考えてみる(図1)。
まず5歳までのすべての子どもの保育を無償化する費用が約2兆1000億円。次にすべての子どもの教育費の公立相当分の無償化は、小学生が約7000億円、中学生が約6000億円、高校生が約9000億円、大学・短大・専門学校生が約1兆6000億円となる。なお大学は4年間、短大・専門学校は2年間在学するものとし、「平成27年度学校基本調査」における進学率をもとに計算している。
以上より、0歳から大学卒業までのすべての子どもについて、子育てに必要な保育費と公立相当教育費を無償化するためには、年間約5兆8000億円が必要だ。待機児童解消のために必要な追加予算約1兆5000億円(詳細は後述)と合わせると、約7兆3000億円。これらに、同じ期間の医療費約5000億円を加えると、約7兆8000億円となる。少なくない金額だけに、その財源をどうするのかが課題である。