アメリカ人の多くは「愛社精神」に乏しい
【弘兼】まず何から始めましたか。
【新浪】何かをするというよりも、何が起こっているかわからないので。
【弘兼】まずは現状の事実を掴む。
【新浪】ということで、工場や販売会社など現場を回ることから始めました。オフィスをこの目で見て、社内の雰囲気を感じたかった。
【弘兼】何がわかりましたか。
【新浪】一番大きな課題というのは「グローバル化」だとわかりました。これまでサントリーは国内市場で、他社にはない独創的な商品をつくってきた。会社は社員をすごく大切にするし、こんなに社員に愛されている会社もない。あらためてすばらしい経営だと思いました。
一方で、買収した米国のビーム社はまったく社風が違う。いろいろな企業を経てから外部からビーム社に入ってくる経営幹部が多いんです。会社へのロイヤルティよりも、自分の人生を生き抜くことを優先する。だから下から上がってきたという経営幹部は少ないんです。外から入ってきて、「これ以上は出世できそうにない」と思うと辞めてしまう。
【弘兼】日本のプロ野球選手とアメリカのメジャーリーガーのような違いですね。アメリカでは優秀な選手ほど、年俸の高いチームにあっさり移籍します。チームを移ることへの抵抗が少ないので、個人がどれだけ活躍できるかに注目が集まりやすい。
【新浪】どちらにもいい面がある。我々は「インテグレーション(統合)」と呼んでいます。文化の違いをどう乗り越えるかいまだに悩んでいます。