人間観察力を磨くオフの活用法

石田さんが心がけているのは、接客の機会をできるだけつくること。そこで、お客さまの観察からスタートする。石田さんは、長身であるうえに、高いヒールを履くようにしているので、店内ではほかのスタッフより頭一つ抜きん出て見える。それを生かして、お客さまがどんな服装をしていて、どんな商品に興味を示しているのか、常に目配りしている。

「首を伸ばして、いつもキョロキョロしています。頭を動かしていないと、『今日は体の具合でも悪いの?』っていわれるくらいなんですよ」

それだからなのか、店の中での石田さんのあだ名は「キリン」なのだそうだ。そんな石田さんは、顧客が商品を手に取ったのを発見すると、すかさずアプローチを始める。とはいえ、いきなり商品説明はしない。

「今日はお天気がいいですね」「お住まいはどちらですか」等々、まずは当たり障りのない話題から入っていく。会話のネタをストックしておくため、石田さんは、テレビのニュースやSNS、雑誌などをこまめにチェックしている。だからなのだろう、石田さんは「相手の懐に飛び込むのがうまい」と社内でも評判だ。

「会話では、お客さまのペースに合わせるようにしています。中学生くらいの女の子って、テンションが高いので、私も高いトーンで話をします。でも、20代後半くらいのお客さまだったら、落ち着いた口調で受け答えします。そのせいか、『見かけよりも、しっかりしているわね』って、お客さまによくいわれます」

気さくで話しやすいというキャラクターもあるが、実は、彼女の努力の賜物でもある。石田さんは、コミュニケーションをよくする方法をいつも考え、オフにはほかの店舗を回って接客を受けたり、いろいろなタイプの人に会ったりして、人間観察を欠かさないという。

お客さまとの会話が弾んできたら、商品説明に移る。しかし、ダラダラと講釈を並べるようなことはせず、クロージングも早い。

「それぞれのアイテムの一押しセールスポイントを決めておくんです。そのほうが、お客さまにも伝わりやすいんですよ。毎週、新作の長所をスタッフ一人ひとりが指摘していく『メリットピックアップ』という店内の接客トレーニングがあるんですが、私はそこで挙がった長所をメモして、トークに取り入れます」