病院でお世話になるあのお仕事はどんな働き方をしているのか。大きな反響を呼んだ『資格図鑑!』の著者が患者からはわからなかった彼ら彼女らの本音に迫る。これを読めば、医者を見る目が違ってくる!?

終電も過ぎた深夜、都内のオーセンティックバーで1人飲みをしていたときのこと。カウンターの隣席でうっぷしていた妙齢の女性がやおら顔をあげ、「マスター、同じのもう1杯っ」とカクテルを注文、こんな語りを始めた。

「ほんとねー、悩んじゃうわよ。やりがいか、マネーか。知的欲求か、経済的余裕か。だってさー、4倍よ。今よりずーっと楽な仕事で、4倍は普通だって言われたら、悩むわよー」

マスターは手慣れた様子で「悩むのは先生が真面目な方だから」と受け応えていた。妙齢の女性は、店近くの大学病院にお勤めの医師らしい。

「そう、マスター、私は真面目なの。真面目一筋で10年やってきた。皮膚科は当直がないから楽だよねだなんて、冗談じゃない。うちには悪性の患者さんがいっぱい来るし、膠原病だって診るし、それが当然なの。『理想のあなたを実現します』とかなんとか、4倍のほうはまるで価値観が違うのよー」

どうやら彼女は皮膚科の専門医で、エージェントから美容外科への転身を勧められているようだった。

医師免許取得から10年間あの大学病院で働いてきた医師だとして、年収はおよそ700万円。いや、ちらっとそれらしき数字を口にしていたので、たぶんそのくらいだと想像するのだが、転職で4倍になると年収2800万円だ。仕事内容も社会的地位もだいぶ違うのだろうが、そりゃ、声がかかれば迷う。真面目で不器用な性格だからこそ、酒に飲まれてしまうほど働き方の選択に悩む。隣席でそんなことを思った。

以上は、たまたま筆者が遭遇したケースだが、勤め先の違いでこれほどの収入格差が生まれる。本当だろうか。