スカイアクティブの影の立役者

――2014年2月に正式開所したメキシコ工場は順調な操業が続いているようですね。

順調です。先ほど申し上げたように、マツダは海外生産の比率が低いために、リーマンショックのとき円高で非常に苦労しました。しかし、われわれの主力工場のある広島そして山口両方の地域には責任があります。国内生産を維持したまま海外生産を増加させる必要があり、海外に出て行くときには海外市場での販売台数を増やさなければなりません。しかも、正価販売を維持しながら販売台数を増大させるという信念のもとで、メキシコ工場の建設に踏み切りました。当初年間14万台でしたが、トヨタさんへの供給分5万台を含めて今では23万台までメキシコ工場の生産を増やしており、台数の上乗せに成功できたと思います。

『ロマンとソロバン』(宮本喜一著・プレジデント社刊)
――今年5月にトヨタと業務提携に向けた基本合意を発表なさいました。

 今回の包括的な業務提携では、我々の商品をさらに高いところに引き上げるものにできるのではないか、さらに良いクルマをつくれるようになるのではないか、と思っています。

 マツダファンのご期待にお応えしていきます。この協業は必ず両社の利益になると信じています。 

――スカイアクティブの別の側面についておうかがいします。開発そのものではなく、開発に必要な資金的な側面です。山内社長の時代、2度も巨額の資金調達をなさいました。

 スカイアクティブを開発する頃に、厳しい経営環境の中、ありがたいことに2000億円を金融市場からご提供いただき、その資金をもとに新車を開発し、そしてメキシコなどの工場をつくってきたのです。これがなければ今のマツダはありません。金融市場には中期計画を説明し、投資家に理解していただきました。おかげで、マツダは大きく変わりました。

 社長以下、財務担当の皆さんが、増資を引き受けてくださった投資企業を個別に訪問してまわりました。社長以下の役員は、エンジニアの技術を信じて、大きな役割を果たしたのです。彼らはスカイアクティブの影の立役者です。販売や財務のがんばりが、スカイアクティブを育てたのです。全社が一つの方向に向かって進んでいった結果です。