技術営業部隊を結成して営業力強化
「今年は拡販をして稼ぐ力をつくり、来年以降から飛躍していきたい」。VAIOの大田義実社長は8月19日に行った記者会見でこう強調した。
VAIOは2014年7月、ソニーのパソコン部門が分離独立し、日本の投資ファンドである日本産業パートナーズが95%、ソニーが5%を出資して新たにスタートした。しかし、1年目は思うようにいかなかったと言ってもいいだろう。ハイスペックPC「VAIO Z」シリーズを満を持して発売したものの、途中から失速。業績についても、未上場のため明らかにしていないが、営業赤字になった模様だ。
そのため、わずか1年で社長交代し、大田氏がVAIOの舵を取ることになった。もちろんそれは大株主の意向であることは言うまでもない。
大田氏は総合商社ニチメン(現・双日)でエネルギー、機械、リテール事業を担当した元商社マン。ブラジル現地法人社長や中国総代表などを務め、同社執行役員を経て、子会社の双日ロジスティクス副社長に就任した。同社退社後は本人曰く「社長請負業」という仕事をしており、サンテレホン、ミヤコ化学の社長に就任して企業の再建を行ってきた。
そして、今年の4月にVAIO社長の打診を受けた。「VAIOはソニー時代から培った高い技術力、ブランド力があり、注目度のお高い会社でやりがいを感じた」と大田社長は話す。
その大田社長がVAIOの経営で強調したのは「自立と発展」。それを実現するために真っ先にあげたのが営業力の強化だ。これまで販売はソニーマーケティングに委託していたが、6月に自前の営業部を新設し、設計担当の人間を技術営業部隊としてお客の元に送ることにした。こうすることで、お客の声をダイレクトに聞き、次の商品開発に生かそうというわけだ。
と同時に、設計・製造から販売・サポートまでの一貫した体制が整うことで、社員の間に意識改革が生まれ、収益責任を持つ体制への移行が図れると大田社長は考えたようだ。そして「商品力と販売力の強化という当たり前のことを地道に実行していく。数量は追わない」と力強く語る。