下馬評になく、意外な社長起用

ゼネコン(総合建設業)が長く続いた「冬の時代」を、やっと抜け出した。東日本大震災の復興需要に加え、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に合わせた官民の関連工事の拡大を追い風に、息を吹き返した格好だ。人手不足による人件費上昇も建設費への転嫁が進み、工事採算が改善し、業績を押し上げている。ゼネコン大手にとっては「攻め」の経営に転じる好機であり、経営刷新により「新時代」モードに切り替えるタイミングでもある。

実際、大成建設は4月1日付で8年ぶりに社長が交代し、鹿島も6月25日付で10年ぶりのトップ人事に踏み切る。両社に限らず清水建設、大林組を加えた大手4社は、いずれも現社長が在任8~10年が経つ「長期政権」であり、トップ交代が視野に入る。とりわけ鹿島の場合は、創業家色が濃く、業界に絶大な影響力を持つ名門だけに、その行方に注目が集まっていた。

なぜなら、中興の祖と呼ばれた鹿島守之助氏の長男で1990年に社長を退任した鹿島昭一取締役相談役以来、創業一族以外からの社長が3代続いており、次期社長で創業一族への「大政奉還」があり得るとの観測が流れていたからだ。創業一族としては既に渥美直紀副社長、石川洋専務が経営陣の重職にあることも、この見方を後押しした。

しかし、決定したトップ人事は、マスコミや業界関係者らの大方の予想を覆した。蓋を開けてみれば、中村満義社長は6月25日付で代表権を持つ会長に就き、その後任に「下馬評にもなく、まったく意外」(同業他社)な押味至一専務執行役員が起用された。その意味で、名門の大政奉還を観測していた向きには肩すかしだった。