――ストリンガー氏はイギリス・ウェールズ生まれの65歳。米国法人社長などを経て2005年6月、現職に就任。以来、長距離移動を挟んだ緊密なスケジュールをこなしている。

それにしても「距離」は頭の痛い問題です。私は先週、投資家向けの会議に出席するためユタ州へ行きました。これはアメリカ企業の主要なCEOや投資銀行、プライベート・エクイティのメンバーらが集まる非常に重要な会議なので、なんとしても出席しなければいけません。

ただ、私がスピーチするのは木曜日なのですが、ユタというのはどこから行っても遠い場所ですから、実際にはほとんど一週間費やしてしまいます。そのうえアメリカで用事を済ませたあと、翌週月曜日に東京の本社へ来るとしたら、土曜日の飛行機でたたなければなりません。

日本のトップによく冗談を言うのですが、彼らは月曜日に日本をたてば月曜日のうちにアメリカへ着く。そして木曜日に仕事を終えてそのまま帰国すれば、週末はまるまる日本で休めるわけです。でも私の場合は、土曜日にアメリカをたたなければいけないから、週末がどこかへ消えてしまうのです(笑)。

――グローバル企業の経営者には距離だけでなく移動時間の長さも悩みのタネだ。

私の移動時間の使い方には2種類あります。ひとつはヨーロッパやアメリカを移動する場合です。向こうではソニーが保有するコーポレート・ジェットを使うことが多いのですが、そうすると時間を節約できます。というのは、空港でのセキュリティ・チェックに時間がかかりませんし、たいていはソニーのエグゼクティブと一緒に移動するので、機内でも彼らと仕事を進めることができるのです。

ユタ州に行ったときも、戦略担当のシニア・ストラテジストと社有機で同行したので、飛行機の中でミーティングの準備ができました。そういう意味では、飛行機の中の時間は有益でした。