家族との時間は移動の合間に

グローバル化が急速に進む中では、エレクトロニクス分野のトップやエグゼクティブである以上、中国やロシア、インド、アメリカなどとの関係を十分に理解することが重要です。私はそういう意味で、なるべく均衡のとれた形で世界を行き来することがソニーにとって望ましいことだと思っています。

――その一方、世界中を飛び回る生活をしているため、家族との時間がなかなかとれないのも悩みのひとつだ。

息子はイギリスのボーディングスクール(寄宿学校)に入っていますから、私のほうから会いにいくこともありますし、息子が会いにくることもあります。去年のクリスマスには妻が子どもを連れてニューヨークに訪ねてきました。先日は、アカデミー賞の授賞式に合わせて妻が1人でカリフォルニアへやってきました。再来週には妻と娘が日本へ来ます。

私のほうが移動の合間にイギリスに立ち寄り、週末だけですが妻や子どもたちと会うときもあります。そういう形で、なるべく時間をつくって会おうと努力しています。妻も子どもたちも私の仕事の重要性を十分理解しているので、我慢してくれているのです。

この仕事を引き受ける前に、子どもにこんな話をしました。「パパはいままでほどはたくさん会えなくなるかもしれないけれど、それでもこの仕事をやったほうがいいかい?」と。

子どもたちは「いいよ」と答えました。当時まだ8歳だった娘は、「もっとパパとたくさんいたいけど、私はソニーも大好き。だからソニーを辞めないで」というのです。

それ以来、私の子どもたちは、本当によく旅をするようになりました。私が初めて飛行機に乗って世界に出たのは17歳のときでしたが、私の子どもたちは小さいうちから世界中を旅しています。

(面澤淳市=構成 鷹野 晃=撮影)