僕は落ちこぼれの坂本竜馬が好きだ

坂本竜馬は城下士よりも低い身分の郷士の出身ですが、勝海舟は毛並みのいい江戸っ子の旗本。僕とは全く違う。知事選に出るっていうのは疲弊した地方をどうやって活性化し、再生していくか。あるいは地方から国家の統治システムを変えていくにはどうやればいいのかを考えてましたから、地方の行政の長という意識はあまりなかった。今も意識してないところが問題かもしれませんけどね。

薩摩に近い宮崎県の土地柄、気持ちは西郷隆盛や大久保利通といった討幕側の位置づけですが、僕はその反体制の人間の中では西郷や大久保よりも坂本竜馬にシンパシーを感じる。大久保は幕藩体制の中の武家のエリートと言ってもよく、明治の新政権に入って要職に就く。西郷だって、征韓論で対立しなければ間違いなく新政府の総理大臣になっていたでしょう。

しかし、坂本竜馬は総理におさまりそうもない。今の商社のような海援隊を組織したくらいだから、政府に入らずに民間貿易や民間外交をやりそうな感じで、異端児というか王道を外れた生き方をしそうなところにシンパシーを感じるんです。ただ、政治や行政の視点からすると、西郷、大久保、それに山縣有朋、岩倉具視、板垣退助、伊藤博文などは王道の仕事をきちんとした連中だとは思います。

でも、司馬さんが描くところの落ちこぼれ的な坂本竜馬が好きなんです。落ちこぼれが反乱を起こして、世の中をひっくり返すところなんか、やはり、夢がありますよ。サラリーマンや僕らのような平凡な人間が、先行き不透明な、混乱の時代に夢を持ち、国家の大事をなそうとするわけです。今の時代は維新とか幕末にたとえられますが、非常に混迷した時代の中で、夢や希望を失わず、しっかりとした自分の軸を持って、目的に向かって生きる男の生きざまには躍動感がありますよね。