<strong>前宮崎県知事 東国原英夫</strong>●1957年、宮崎県生まれ。県立都城泉ケ丘高校を経て、専修大学経済学部に入学。2000年に早稲田大学第二文学部に入学。04年、卒業と同時に同大政治経済学部に入学。06年中退。07年、宮崎県知事に立候補、当選。第52代宮崎県知事となる。
前宮崎県知事 
東国原英夫 
1957年、宮崎県生まれ。県立都城泉ケ丘高校を経て、専修大学経済学部に入学。2000年に早稲田大学第二文学部に入学。04年、卒業と同時に同大政治経済学部に入学。06年中退。07年、宮崎県知事に立候補、当選。第52代宮崎県知事となる。

司馬遼太郎さんの本は20代の頃に熱中して読みました。なかでも『竜馬がゆく』と『国盗り物語』『坂の上の雲』が大好きです。特に『竜馬がゆく』は、多くの読者を感動させるだけあって、胸を躍らせながら読みました。時代の寵児として格好よく描かれている坂本竜馬像は、史実に基づいているとはいえ小説ですから、“司馬観”によって脚色はされてますが、司馬さん独特の歴史観、人物論に文章の上手さが相まって、僕も共感したんです。

坂本竜馬といえば、僕には思い出がある。ジョーダンズの三又忠久がプロデュースした舞台「おーい! 竜馬〈青春篇〉」への出演が宮崎県知事選の立候補へ背中を押したと言ってもいいからです。幕末から明治維新への変革の熱気は僕を政治の世界へ突き動かすのに十分すぎる魔力があった。残念ながら僕は坂本竜馬ではなく勝海舟役だったが、竜馬の敵役でもある勝を演じるにあたって強く意識した点がある。

勤皇の志士にも幕府側の武士にも様々な人物がいるわけですが、その中で西郷隆盛と会談して無血の江戸開城を実現した勝海舟の異端性は、思想的にも哲学的にも際立ったものだった。あの幕末の大騒動の中で冷静に日本がどちらの方向へ進むべきなのかを見極める力があった。論理的に現実を捉え、それと同時にこの国の行く末の夢や希望はどのようなものなのか、自分の中に二律背反的なものを抱えながらも国家のビジョンをしっかり持っていた。

咸臨丸を指揮してアメリカまで太平洋を横断した勝は、幕閣にありながら国内だけが時代のステージではないという進取の精神に富み、かつ1860年代なのに地球規模のグローバルな視点を持っている凄い人物だなと思った。それだけに時代の激流に動じない勝のこの“突き抜けた感”をどう演じたらいいのか、強く意識しましたね。だって、あの坂本竜馬でさえ魅せられて“勝先生”になってしまったわけですから。

この舞台の後、知事選に出ることになりますが、そのときの思いは坂本竜馬のほうに感情移入してましたね。勝は幕府側、つまり政府側なんです。で、僕のスピリッツは勤皇の志士の精神ですよ。自分は中央ではなく地方から国を変えていくっていう意識を持ってましたからね。だから地方の首長にはエリートではなく、下級武士がなるもんだと。いわゆる雑草みたいな人間でないと革命とか改革はできないだろうと考えていた。