中国には「飲水思源」という言葉があります。水を飲むときはその源に思いをはせるという意味で、弊社のモットーでもあります。1972年に初来日して以来、留学時代を経て86年に東京で手配会社を設立、94年に香港で旅行会社を創業しました。その翌年に起きたのが阪神大震災です。香港の旅行会社は一斉に日本ツアーを取りやめましたが、私は「危機こそチャンス」とツアーを催行し続けたことで大きな飛躍を遂げることができ、97年には日本向け市場で香港一の旅行会社となりました。

その教訓を今こそ活かすべきと考え、3月27日にツアー再開第一弾の新聞広告を出しました。弊社の日本市場の売り上げシェアは4割ほどですが、日本行きの専属ガイドが約100名います。日本には広東語のできるガイドがほとんどいないからで、彼らの失業も心配でした。それに日本には多くのビジネスパートナーがいる。ホテルやバス会社の運転手の方たちも大変なことでしょう。一日も早くツアーを再開させたいと思いました。

とはいえ、お客様は原発事故による放射能汚染を心配しています。そこでツアー訪問地と福島からの距離を明示した広告を打ちました。ただ数字だけでは香港のお客様は土地感覚がないので、意味がない。香港から広州までは約180kmですが、福島・大阪間はその3.5倍。沖縄は10倍以上あることを書き添えました。さらに、ツアー期間中訪問地でマグニチュード6以上の地震が起きたら全額返金にすることをアピールしました。4泊5日のツアーで4日目に起きても全額払い戻し。これはいわばバクチです。

でも、こういうギャンブルに乗ってみようというのが、香港のお客様なのです。「マカオのリスボアホテルのカジノと同じだなあ」とあるお客様の口から冗談が出て、これは明るい兆しだと思いました。

今必要なのは、観光地のPRでなく、日本では通常の生活が送られているという強いメッセージです。第一印象が大切ですから、成田空港は節電しないで、通常のように明るくしてください。それとこれは私からの提案ですが、この夏に東アジアの人気歌手を東京に呼んで復興コンサートを開いてみてはどうでしょう。大勢のファンが必ず来ます。口コミの影響力は計り知れないと思います。日本の皆さん、一緒に頑張りましょう。

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(中村 正人=構成 坂井 和=撮影)